HPL2 Processorは、ヘッドホンやイヤホンで音楽を聴いても、スピーカーで聴くのと同じようなミックスバランスで気持ちよく聴けるようにするVSTプラグインソフトウェアである。
HPL music source
https://www.hpl-musicsource.com/
VSTに対応した音楽プレイヤー(foobar2000、Music Bee、JRiver Music Centerなど)でプラグイン使用する方法はネットで探せば見つかるが、再生できるのは自分で音源ファイルを持っているものだけだ。このブログ記事では、Apple MusicやSpotifyなどの定額配信サービスやYouTubeなど、ストリーミング再生でもHPL2 Processorを使えるようにする方法を説明する。
通常のPCでの音楽再生は以下のような経路で行われる。
アプリ → 再生デバイス(内蔵オーディオアダプタなど)
foobar2000などにVSTプラグインを組み込んだ場合は以下のような経路となる。アプリ内部でHPL2化の処理を施した音が再生デバイスから出力される。
アプリ(VSTプラグイン) → 再生デバイス
この記事で説明するのは以下のような仕組みである。アプリの出力を仮想ケーブルデバイスに送り込み、DAWに流し込む。そこでVSTプラグインによるHPL2処理を施し、再生デバイスから音を出す。
アプリ → 仮想ケーブル → DAW(VSTプラグイン) → 再生デバイス
PCのオーディオアダプタにステレオミキサー機能があれば、それを使用してDAWに流し込むことができるが、あいにくオーディオアダプタやドライバによってはステレオミキサーをサポートしていない。その場合は仮想ケーブルのソフトウェアをインストールする。ここではVB-CABLEを使用する。このソフトはフリーウェアではなくドネーションウェアである。寄付額は任意。
https://www.vb-audio.com/Cable/index.htm からZIP形式のパッケージをダウンロードし、解凍してインストールする。VBCABLE_Setup.exeが32ビットOS用、VBCABLE_Setup_x64.exeが64ビットOS用である。.exeファイルを右クリックし、管理者として実行する。インストール後はPCのリブートが必要である。
Windowsのサウンド設定の「再生」タブを開くと、「CABLE Input」というデバイスができているはずだ。それを既定のデバイスにする。プロパティの詳細タブでサンプルレートとビット深度を設定する。ここはデフォルトでも音は出ると思うが、私はここを含め、設定できる箇所は全て44.1kHz/24ビットにしている。余分なサンプルレート変換がない方が音がいいという推測なのだが、劇的に変わるわけではない。
同様にサウンド設定の「録音」タブに行き、「CABLE Output」を既定のデバイスにし、プロパティの詳細タブでサンプルレートとビット深度を設定する。DAWで入力デバイスを明示的に設定できる場合は、既定のデバイスにする必要はないと思うが、念のため。
次にVSTプラグイン対応のDAWをインストールする。ネットで探すとフリーのものがいくつか見つかる。ここではREAPER v0.999を使う。REAPERは有料ソフトウェア(60ドル)なのだが、v0.999は無料で使える。もっとも2006年の古いバージョンなので、そこは自己責任で。
REAPER | Old Versions
https://www.reaper.fm/download-old.php?ver=0x
起動後に出てくるREAPER New Version Notificationのダイアログでは、Check for new versionsのチェックを外し、Closeボタンを押す。
HPL2 Processorは https://www.hpl-musicsource.com/software からWindows用ファイルをダウンロードする。ZIPファイルを解凍し、HPL2 Processor.dllをC:\Program Files (x86)\REAPER\Plugins\FXにコピーする。REAPER 0.999は32ビットソフトウェアなので、VSTプラグインも32ビット版を使う。ちなみにREAPERの最新バージョンは64ビット版も出ていて、その場合は64ビットのHPL2 Processor.dllを使う。コピー先ディレクトリがプラグインのパスに含まれているかどうか確認しておく。もしなければ追加する。
REAPERのOption→Preference→Audio→Devicesで入出力デバイスを以下のように設定する。
Audio System:DirectSound
Input Device:CABLE Output(VB-Audio Virtual Cable)
Output Device:PCの再生デバイス
Sample Format: 24 bit
Samplerate: 44100 hz
(注)サンプルレートとビット深度はデバイスの設定と合わせた。
さらにFX Plug-insのRescan directoryボタンをクリックして、HPL2 Processorプラグインを認識させる。
メイン画面左下のMASTERにある「fx」ボタン(Show Master FX Window)をクリックすると、プラグインを選択する画面(Add FX to: MASTER)が表示される。VSTツリーの中に「HPL2 Processor」があるはずだ。それを選択してOKを押すとHPL2のUIが表示される。UIは右上の×ボタンで閉じておいてよい。
メイン画面TrackメニューのAdd new trackを選択し、新しいトラックを追加する。トラック名は「Virtual Input」とでもしておく。スライダーボリュームの左の赤丸をクリックして録音状態にする。Leftという文字が書いてあるバーを右クリックし、メニューからStereo Input→Left/Rightを選択し、さらにRecord: disable (input monitoring only)を選択する。
この状態でブラウザやiTunesで音楽を再生すると、PCの再生デバイスから音が出て、ミキサーのレベルメーターが上下するはずである。MASTERのfxボタンの下の「ON」ボタン(Toggle Master FX Enabled)をクリックしてHPL2のオンとオフを切り替えられるので、実際にプラグインの処理が行われているかどうか確認できる。HPL2をオンにしたときは音量がやや下がり、音の広がりが狭く感じられるはずである。
再生が確認できたら、File→Save Project Asでプロジェクトを保存しておく。
再生時にプチプチとノイズが入る場合は、Audio SystemをDirectSound以外に設定してみたり、Buffersの数字を大きくしてみたりすると改善するかもしれない。ただしBufferを大きくしすぎると、再生遅延が大きくなり、ビデオ映像と音声がはっきりずれて気持ち悪いので、違和感のない範囲で調整する。
fxボタンをクリックするとHPL2のUIが表示される。再生中のスクリーンショットと感想をブログやSNSで公開して、開発者のアコースティックフィールド久保二朗さんに感謝するとともに、HPL2を広めよう。
(補足)REAPERの最新バージョンにはOS X版もある。OS XではRogue AmoebaのLoopback(有料)が仮想ケーブルとして使える。
Rogue Amoeba | Loopback: Cable-Free Audio Routing
https://www.rogueamoeba.com/loopback/
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