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2005年10月の31件の記事

2005年10月31日

「社長募集 年俸3000万円以上 完全週休2日制」

10月30日付の日本経済新聞に外資系ソフトウェア会社の社長募集広告が出ていた。新聞の求人欄に社長の求人まで出ているとはビックリ。

募集しているのはCDCソフトウェア。NASDAQ上場企業のアジア=パシフィック地区子会社だ。以前の記事で書いた社長の給料は3000万円が目安ということが確認できる。

ダイエットスクールを運営している日本ダイエット株式会社も社長を募集していた。こちらは月額報酬50万円以上。業績次第でかなりの額になるのかもしれないが、同じ社長でもずいぶん開きがあるものだ。

20051031President

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2005年10月30日

ヴィトン君

NetWorld+Interop Tokyo(2005年からInterop Tokyo)やWPC EXPOのような展示会に行くと、各社のブースのコンパニオンたちが客を誘導したりアンケートを回収したりしている。彼女らが目当てのカメラ小僧も多い。そんな中に、展示会の経験が長い人々の間で有名な異色の存在がいる。人は彼を「ヴィトン君」と呼ぶ。

ヴィトン君の名前は、彼がいつも持っているルイ=ヴィトンの大きなバッグ(アタッシュケース)から来ている。妻が最初に目撃した時はキャリーケースだったそうだ。ヴィトンを愛用し続けているが、バッグの種類は変わることがあるらしい。

ヴィトン君は、いつも決まって赤の帽子に赤いブルゾン姿で、赤いスニーカーを履いている。近くでしげしげと見るわけにいかないが、ウェアや帽子にフェラーリの跳ね馬ロゴがついているようにみえる。

最初はカメラ小僧だと思った。しかし写真を撮っている気配はない。注意してみていると、ときどきコンパニオンと親しそうに話をしている。いったい彼は何者なのだろうか。

あるイベント運営会社の社員、つまりコンパニオンとの付き合いが多い人によると、彼のバッグの中にはコンパニオンのお助けグッズが入っているらしい。伝線したときのためにストッキング、のどが渇いたときのためのドリンク、はては生理用品も入っているとか。以前に一度、バッグを床に広げてコンパニオンと二人でなにやら話し込んでいる姿を目撃したことがある。お助けグッズを渡していたのだろうか。

しかし、正体不明の男性からもらったストッキングや生理用品を使うだろうか。彼は怪しくないから大丈夫と先輩のコンパニオンから聞かされていたとしてもだ。

さらに不思議なのは、平日の昼間にもかかわらず、会期中は毎日のように展示会に来ていることだ。仕事に行かなくていいのだろうか。仕事をしなくても食べていけるくらいの資産があるのだろうか。

謎に包まれたヴィトン君だが、彼に接触し話を聞いた人のレポート(ブログ)を発見した。写真も載っていて、フェラーリの跳ね馬ロゴが帽子についていることが確認できた。そのほかの謎については、ぜひレポートを参照して欲しい。

米林ジャーナル
http://www.yonebayashi.com/yoneja/

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2005年10月29日

サポートマネージャの勝負ネクタイ

カスタマサポートマネージャというのは因果な稼業である。カスタマサポートは、ユーザがトラブルに遭遇したときに利用するものだ。使い方を質問したり、動作環境を確認したりという目的で利用することもあるが、ほとんどの場合は、製品を使っていて問題が発生した場合に利用する。トラブルを解決してあたりまえ。少しでも報告が遅れると叱責を受ける。ストレスのたまる職場である。

担当者レベルの調査が難航し、トラブルが長期化したり話がこじれたりすると、サポートマネージャが客先に出向いて説明・謝罪することになる。相手は担当者の場合もあるし、その上司の管理職のときもある。いずれにせよ初対面だ。初対面の相手がすでに怒っていたり、こちらにいい印象を持っていない、あるいは文句を言おうと待ちかまえているところに乗り込むわけだ。まさに、飛んで火に入る夏の虫。

あるときは、こちらが謝罪するなり、「で、いつ直るの!?」と大声で怒鳴りつけられ、すっかりペースを狂わされた。でもこれは例外で、冷静にこちらの話を聞いて、現実的な解決策を一緒に考えてくださるありがたい方も数多くいらっしゃった。

訪問する前には、サポート担当者から状況を詳しくヒアリングし、報告書を念入りに推敲し、営業チームにもレビューしてもらう。報告書は大事だが、なによりも自分自身の第一印象が鍵だ。10分かそこらで信頼を得て、報告内容に納得していただかなければ、収束できるトラブルも収束できない。カスタマサポートの責任者という立場で会うわけだから、ちょっとした失態がチームあるいは会社全体の信用に関わる。

挨拶をはじめとする仕草、説明のときの口調はもちろん、服装にも気をつかうのは当然だ。スーツはダークグレー、ワイシャツは必ず白。そしていつのころからか、柄が目立たない紺色の地味なネクタイが、トラブル報告に行くときのお決まりになっていた。たぶん、非常に難しいトラブルの報告のときに着用していて、それがうまく解決できたので験を担いだのが最初だと思う。それ以来、この紺のネクタイがトラブル報告のときの「勝負ネクタイ」になった。

洋服ダンスにいまもかかっている「勝負ネクタイ」。これを使うことがあまりないように祈っているが、くたびれる前に「後継者」を育てておいた方がいいだろう。ソフトウェアに限らず、ビジネスにトラブルはつきもの。うまく付き合っていかなければならない。

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2005年10月28日

外資系で役立つ正規表現

自分以外の社員が全員外国人というところは別として、外資系日本法人の日常会話は日本語だし、資料もほとんど日本語で作っているだろう。少なくとも私が知っている範囲ではそうだ。

とはいっても、ワールドワイドでは英語が公用語なので、本社や他国のスタッフとコミュニケーションするためには、英語の資料を送らなければ話にならない。日本語で作った資料を翻訳することもあるし、英語が苦手だからいったん日本語で書き、ほかの誰かに翻訳してもらうということもある。ここで問題なのは、英語化した資料が、相手のパソコン環境できちんと表示されるかどうかだ。

文字化けは絶対に避けたい。文字化けメールをもらったときや、日本語化の不具合でGUIが文字化けしている製品を使ったときに、自分がどう感じたかを思い出そう。それと同じ感情を相手も抱くはずだ。資料の中身に入る前に悪印象を与えるのは損。直接会うときと同じく、文章でも第一印象が大切である。

文字化けをなくすためには、英文フォントだけを使い、ダブルバイト文字を使わないようにする。フォントについては、それほど神経質にならなくてもよい。つい日本語フォントを使ってしまっても、たぶん代替フォントが割り当てられるので、それほど致命的ではない。実際に検証したわけではないが、MS Pゴシックで書いたExcelを送っても文句を言われなかったから、おそらくそうなのだろう。

一方、ダブルバイト文字、俗に言う全角文字は致命的だ。確実に文字化けの原因となる。IMEをオフにしてゼロから英文を書けば、ダブルバイト文字が混入することはない。しかし上に書いたように、日本語で書いた文書を流用することが多い。Excelのセルをひとつずつ翻訳していったり、日本語のWord文書を書き換えていったりすると、ダブルバイト文字を残してしまうことがよくある。

英文字は、シングルバイト文字(半角)なのかダブルバイト文字(全角)なのか、一見しただけではわかりにくい。なかでも括弧記号「(」と「)」は要注意である。また、意外に見落としがちなのが「○」と「×」だ。たとえば製品のテスト結果一覧表を送る場合を考えよう。日本語版の一覧表は、結果がOKだった項目に「○」、問題の出た項目に「×」と書いてある。テスト項目をきちんと英語に翻訳したのに、○や×をうっかりそのままにしてしまうことがけっこう多いのだ。私自身が指摘されたことがあるし、同僚が同じミスをやりかけたのをレビューで見つけたこともある。

いずれにせよ、目視でチェックするのには限界がある。こういうところはコンピュータを活用して楽するべきだ。ダブルバイト文字を探すときに頭を使う必要はないから、脳の退化を心配しなくてよい。

私は、Office文書をテキストで出力して秀丸エディタで開き、以下の正規表現でダブルバイト文字を検索している。

[^ -~\t\n]

なおダブルクォーテーション記号「”」は、シングルバイトでWordやExcelに入力しても、テキスト出力するとダブルバイト文字になってしまう。Officeの仕様かもしれない。これだけは目視チェックする必要がある。

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2005年10月27日

マインドマップ(3、完) ソフトウェア

マインドマップを書くソフトがいくつかある。私が評価したのは「MindManager」「Freemind」の2つだ。ソフトを使うと、きれいなマップが描ける。私は字が汚く、自分の書いたメモを解読するのに苦労することもあるので、これはありがたい。手書きで書いたマインドマップをソフトで清書するのは、マップを復習することになり、記憶を定着させるのにも役立つ。

MindManagerは、一本3万円と高価なこともあって、文句のつけようがないくらい高機能で使いやすい。さおだけ屋の読書メモはMindManagerで描いたものだ。線のスタイルや囲みの形状、標準装備のテンプレートなどが充実していて、洗練されたマインドマップが描ける。中央のトピックのまわりにノードをバランスよく配置してくれる機能がありがたい。

Freemindは、Javaで開発された無償ソフトウェアである。動作させるためにJREが必要で、この点がパソコンに詳しくない人にとってハードルになるかもしれない。私が最初に評価した0.7.1は機能的に見劣りがしたのだが、8月にリリースされた0.8.0で、不満のないレベルまで改良された。アンドゥ、ノードの移動、自動レイアウト、設定のGUI化などがうれしい強化ポイントだ。マップの表現力はMindManagerに比べるとかなり劣るが、実用上は問題ないレベルだ。

Freemindを試そうという人は、JREの最新版1.5.xか、ひとつ前の1.4.2を使うこと。私のメインマシンThinkPad T42には1.4.1がプリインストールされているのだが、このバージョンでFreemindを動かすと、右クリックメニューの表示位置がずれ、操作性が非常に悪かった。JRE 1.4.2をインストールすると、この問題はきれいに解消した。

Freemindのもうひとつの注意点は、起動方法によってプラグインがロードされないこと。Freemindの配布パッケージには、プラグインなしのものと、PDF出力やオンラインヘルプなどのプラグインを含んだMaxパッケージの2種類がある。Maxパッケージをインストールしいても、拡張子mmのFreemindファイルをダブルクリックして起動したときにはプラグインが読み込まれていない。その結果、PDF出力ができない、0.8.0で追加された新しいオンラインヘルプが表示できないということになる。スタートメニューからFreemindを起動すれば問題ない。

mindmap
右の画像は、この記事の構成を考えるためにFreemindで描いたマインドマップだ。最初のころに描いたものに比べて、文の割合が減ってキーワードが多くなり、マインドマップらしくなってきた。

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2005年10月26日

マインドマップ(2) 理論

何枚かマインドマップを書いたところで、トニー=ブザンの「頭がよくなる本」を読んだ。理論から入るよりも、実際に使ってみて感触をつかんだあとできちんと勉強した方が頭に入りやすい。これはプログラム言語や外国語を習得するときも同じだ。いきなり文法書を読んでも頭に入らないし、だいいち面白くない。実践から理論、そしてもう一度実践へという繰り返しが、新しいものを学ぶときによいと思う。

マインドマップにはいくつか決まりがあるのだが、私が重要だと思うのは、「キーワードで書くべし」というルールだ。文章、あるいは文の断片を書くのがいままでのノート法だった。キーワードとキーワードを繋いでいくマインドマップは、すばやく手軽に書け、情報の関連を整理しやすい。また、キーワードをきちんと選べば、そのキーワードがきっかけとなって、本の内容を思い出すことができる。マインドマップをアウトプットに使う場合は、ひとつのキーワードに触発されて、新しいキーワードを思いつき、キーワードを書き連ねていくことで、発想をふくらませていくことができる。

ただし、これまでのノート法から完全に脱却しきれていない。前回の記事のマインドマップに文がたくさん書いてあるのはそのためだ。何枚もマインドマップを書いているうちに、徐々にキーワードで書けるようになってきた。

以前は、講演資料を作るときにアウトラインプロセッサ(Nami 2000やアイデアツリー)を使って考えをまとめていた。大項目から小項目へブレークダウンしてアイディアをまとめていくという点で、マインドマップとアウトラインプロセッサは似通っている。しかし発想のためのツールとしてみた場合、キーワードで発想を広げていくマインドマップの方が自由に書ける感じがする。

アウトラインプロセッサも、文章ではなくキーワードで書くという方法を使えば同じような使い方ができそうだ。見方を変えるとマインドマップも結局は大項目から小項目というツリー構造の図を書いていることになる。一見似ているようだが、決定的に違うのは、ベースとなるイメージを中心におき、それをいつも見ながらキーワードを連ねていくことと、全体が一度に見渡せることだろう。アウトラインプロセッサの場合は、主題は一番上にあり、中項目や小項目を描いていくと、やがて見えなくなってしまう。全体を一度に見渡すのも、もちろん不可能ではないが、マインドマップの比ではない。

見方を変えるとツリー構造だと書いたが、マインドマップは放射状に描くことが重要だという。「情報が連想となって放射状に広がる仕組みは、脳の神経細胞であるニューロンと同じで、マインドマップは脳のネットワークをそのまま紙に写した形」なのだそうだ(「記憶力・発想力が驚くほど高まるマインドマップ・ノート術」より)。

(続く)

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2005年10月25日

マインドマップ(1) 出会いと実践

ここ一ヶ月くらい、「マインドマップ」を使っている。本や講演のメモをとったり、ブログの記事を書くときに考えをまとめたりと、情報のインプットとアウトプットの両方で活用している。

マインドマップは、イギリス人のトニー=ブザンが開発したもので、脳が情報を処理する動きに適合するように、「主題となる概念を中心として、そこから外に向かって個々の概念へと枝分かれしていくやり方」で書くノート法だ。

私がマインドマップに出会ったのは、「プレジデント」2005.7.18号の特集「『脳力』革命」で読んだ神田昌典氏の記事。面白そうなのでちょっと試してみようと思ったのが、マインドマップを使うようになったきっかけだ。これまでは、上から下に、あるいは右から左に向かって文やキーワードを書き連ねてノートを取っていた。子どものころから学校でやっていた方法だ。

神田氏の記事を手がかりに、インターネットでマインドマップの情報を調べてみると、ブログやメールマガジンなどがいろいろと見つかる。マインドマップを書くソフトもある。「Mind Manager」の体験版をダウンロードして、読書メモを手始めに使い始めたところ、ちょっと使っただけで役に立ちそうだという感触があった。

saodake
右の図は、最初にマインドマップで書いた「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の読書メモだ。これまでは、読書メモをテキストファイルに書いて、スクラップソフトの「紙 2001」で管理していたのだが、活用しにくかった。重要だと思って書き出したキーワードが、テキストファイルにしてしまうと横一列に並んでしまう。せっかく三色方式で色分けしたものを、ふたたび黒一色の無味乾燥な情報に置き換えてしまっていた。これでは意味がない。

その点、マインドマップはカラフルで視覚に訴える。また、キーワードが中心部にあるのか周辺部にあるのかで重要度がわかるし、何よりも一枚の図で本全体の内容が一目で見渡せるところがよい。

(続く)

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2005年10月24日

効果的なプレゼンとデモのヒント

私の妻は、マーケティング=コミュニケーションズ(マーコム)の仕事をしていた。小さな会社だったので、プレスリリース作成・配信から取材のアレンジ、そしてイベントの運営まで何でもやっていた。そのときの癖か、パーティなどにゲストとして出席すると、スタッフの配置が適切か、来場者が不都合を感じていないかなどをチェックしてしまう。自分の結婚式でも高砂から目を配っていて、出席した知人に「○○さん、目があちこちに飛んでましたよ」と指摘されたとか。

眞鍋かをりがブログで書いていたが、こういうのは一種の「職業病」といえる。私の「職業病」は、イベントやセミナーで講演を聴くと、内容そっちのけでプレゼン作法のチェックを始めてしまうことだ。先日のCognos Performance 2005でも、気になる点がいくつかあった。

ひとつは、事例セッションで共通して見られたプレゼンの構成だ。全部で4つの事例セッションを聴講したのだが、会社紹介 → 導入の背景 → 導入のスケジュール → 活用事例や効果 → 今後の課題、という構成がほとんどだった。これはこれで、そつのないプレゼンテーションの型として有効だ。しかし同じ構成を続けて聴かされると印象が薄くなってしまう。時系列のストーリー構成はどうしても退屈になりがちで、肝心の活用事例の部分まで集中力が続かないという弱点もある。

会社紹介の部分はもっと工夫した方がいい。世間であまり知られていない会社ならいざ知らず、超有名な大企業であれば、従業員数や事業内容を並べてもあまり意味がない。プレゼンテーションの冒頭は、聴衆を引き込むことが大事。会社四季報的な情報ではなく、聴いている人が「へぇ」と思うようなエピソードや業界裏話で会社を印象づけるようにしたいところだ。

全体のストーリー構成は、「こういった効果が出た」ということを最初にアピールするやりかたもある。いわゆる「結論を先に」という構成だ。ここで聴衆の興味を引きつけておけば、導入作業の詳細や、どうやってその効果を出したかを真剣に聴いてくれる。また、特色のあるプレゼンテーションとして、数多くのセッションの中で特に記憶に残るものになるだろう。

もうひとつ気になったのは、プレゼン資料の文字の大きさや量だ。プレゼンの作法を解説した本でよく指摘されているが、今回聴いた事例セッションはどれも、文字が小さく量が多すぎて、後ろの席の人は読めないくらいだった。どの部分を話しているのかわからなくなることもあった。基調講演は、さすがにプレゼンテーションに慣れた方々だけあって、プレゼン資料はあくまで補助で、講演者の話が主になっていた。こういうのを私も見習いたいものだ。

Cognos 8のデモは、スムーズでわかりやすく、十分リハーサルをしていたことがうかがえて好感を持てたのだが、惜しむらくは画面の文字が小さすぎて読めなかった。画面にたくさんの情報を出力するというBI製品の性格上、仕方のない面もある。しかし工夫は可能だ。

私はソフトのデモのときに、「GraffiScope」というツールを使って、注目してもらいたい部分を拡大表示している。拡大表示ツールを使うときの注意事項は、拡大エリアをあまり動かさないこと。あちこち動かすと聴衆が目を回す。GraffiScopeの場合は、マウスカーソルを該当部分に位置づけたあとで、キーボードショートカットでツールを起動して拡大表示する。説明が終わったら、Escキーで通常の表示に戻るという手順がよい。

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2005年10月23日

日本橋タカシマヤの屋上駐車場

日本橋タカシマヤには屋上駐車場がある。その存在を知らない人、たとえばいつも地下鉄で行っている人は、どうやってクルマが屋上まで上がるのか不思議に思うだろう。東京の中心部でビルが密集している場所であり、スロープを作る余裕がないし、そもそもそんな構造物があたりに見あたらない。

実はクルマ用のエレベーターが二基あるのだ。エレベーターでクルマを運ぶだけなら、普通の立体駐車場と同じで、わざわざ紹介するまでもない。立体駐車場と大きく異なるのは、人が乗ったまま屋上まで運ぶことだ。

係員の誘導にしたがって、巨大なエレベーターの中にクルマを乗り入れる。エンジンを切ると、うしろで扉が閉まり、エレベーターが動き出す。フロントガラスの外に2階、3階という表示が見え、だんだん上昇していくのがわかる。屋上に着くと、今度はクルマの前の扉が開く。エンジンをかけ、いざ発進!

特撮物マニアなら、「ウルトラセブン」のウルトラホーク1号が秘密基地から発進するシーンを思い出すだろう。BGMに「サンダーバード」のテーマ曲を流すのもいい。

付け加えると、降りるときにちょっとしたスリルがある。下降を開始すると、ガクンという軽い衝撃とともに、ちょっとだけ逆Gがかかる。遊園地の絶叫マシンとまではいかないまでも、初めて利用する人は、「ひゃぁ」と声が出てしまうかもしれない。

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2005年10月22日

トラブル対応の基本プロセス(4、完) 次のアクションの合意)

トラブルが一回のやりとりで解決しない場合、ユーザと何回か連絡を取ることになる。その場合に双方が意識すべきなのは、「次のアクション」である。「いつ・誰が・何を・どんな手段で・どこで」実施するかを合意する必要がある。たとえば、ユーザがデバッグ情報を採取して今週末までにベンダーに送付するとか、ベンダーがログを解析して結果を明日までに連絡するとかいうように、具体的に決める。

製品のトラブルのときは、基本的にユーザが強い立場にあるため、次のアクションをユーザの言いなりに決めてしまうことが多い。2回目に述べた「期日」と同じく、無理な約束をしてもしょうがない。約束を果たせず、迷惑をかけるだけだ。自分の現在の負荷を十分考慮し、現実的な「次のアクション」を逆提案しよう。

別のトラブルが同じユーザや別のユーザから入ってくるといった状況の変化はいつでもあり得るし、思ったより現象が複雑で、約束した期日までに解析結果が出せないこともある。こういった場合に、約束した結果が出ていないからと何も連絡しないのはよくない。とにかく一報を入れる必要がある。もし少しでも解析が進んでいるのなら、それを報告すればいいし、何もわかっていない場合でも、どういう観点で調査を進めているか、どの部分が怪しいと考えているのか(つまり仮説)を伝えれば、満足しないまでも、ある程度納得してもらえるだろう。要は、調査が先に進んでいるのを伝えることだ。

できれば、「次のアクション」を合意するとともに、「次の次のアクション」を用意しておいた方がよい。ここまで要求するユーザはあまり多くないが、たまにお目にかかる。その意図は、行き当たりばったりで計画性のない調査ではだめだということである。最初の仮説が外れたらどうするつもりなのかを考えておくことは、こういう厳しいユーザの対策としてだけでなく、自分の精神衛生上もメリットがある。仮説が外れたときは、がっくりして次のことが考えられなくなるものだ。次の一手を用意しておけば、すぐに次のステップに取りかかれる。

トラブル調査では、タイムマネジメントが非常に重要である。ひとつのトラブルにかかりっきりになって、他のトラブルをおろそかにしていると、重要でなかったものがやがて火を噴くようになる。こういったことにならないよう、自分の時間をきちんとマネジメントする必要がある。「次のアクション」を合意したら、それを達成するために、いつ何をやるべきかをあらかじめスケジュールしてしまうとよいだろ。「タイムマネジメント」で書いた佐々木かをり氏のやり方である。もちろん、いつも予定通りに事が運ぶわけではない。新たに緊急の要件が入ることは日常茶飯事。その場合は、予定を見直す。日々のタイムマネジメントが鍵だ。

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2005年10月21日

トラブル対応の基本プロセス(3) 情報収集と解析

さて、期日やビジネスインパクトが聞き出せたら、実際にトラブルを解決する作業に入る。その第一歩は情報収集である。採取漏れがないように、収集すべき情報をチェックリスト化しておくのがよい。どんな製品にも共通するのは次の5つだ。

1.環境

ハードウェア構成やネットワーク構成、OSやパッケージソフトのバージョンやサービスパック/パッチ適用状況などだ。それに、最近実施した環境変更。これは特に重要だ。いままで動作していたのに、ある日トラブルが起き始めたという場合、何らかの環境変更が引き金を引いている可能性が高い。問い合わせてきたユーザ担当者が把握していない環境変更も含め、徹底的に洗い出す必要がある。

2.発生頻度・タイミング

必ず発生するのか、一定のパターンがあるのか、それとも不定期に発生するのか。不定期に発生するものはやっかいだが、まずは発生日時を一覧表にしてみるのがいいだろう。そこから何かパターンが見えてくるかもしれない。他の処理との関連がないかという観点で一覧表を見ることも必要だ。たとえば、レスポンスが不安定だったり、突然悪化したりという性能問題の場合、他の処理との資源競合を疑うのが定石である。同じ観点での調査は、性能問題以外でも解決の手がかりになりうる。

3.再現手順

再現手順がわかっている場合は、それを聞き出す必要がある。このとき注意すべきことは、ユーザは、これはやっていて当たり前だろうという先入観がもとで、細かい手順を省いて知らせてくる場合があるということだ。手順がひとつ漏れただけで発生しなくなることは非常に多い。漏れなく聞き出す必要がある。

4.調査経緯

トラブルが発生した以降、ユーザ側でどんな対処をおこない、その結果はどうだったか、そして何が原因と推測しているかなどを聞き出す。ただし最初に述べたように、ユーザが思い違いをしている場合もあるので、あくまで参考情報として聞くにとどめる。

5.各種のログ

もっとも信頼できる情報源はログやトレースである。具体的なトラブル調査はログの解析から始まると言っても過言ではない。ログを解析するときに、正規表現による文字列検索・抽出というテクニックが役に立つ。高機能なテキストエディタ(たとえば秀丸エディタ)や、Perlなどのテキスト処理言語の使い方に習熟していると、調査の効率が格段に向上する。たまに、Windowsのメモ帳でログを見ているSEを見かけるが、あれでよく解析できるものだと感心する。プロは道具にこだわるべきだ。弘法は筆を選ぶのである。

収集した情報を解析して原因を突き止めるのが「トラブルシューティング」だ。トラブルシューティングの基本は「仮説と検証」である。ログなどを解析して、「この部分が問題ではないか」という仮説を立てる。そして、ハードやネットワークの構成を一時的に変えたり、ソフトやハードの設定を変えたり、操作手順を変えたり、デバッグログを採取したりして、その仮説が正しいかどうかを検証する。この地道な繰り返しだ。

仮説・検証を繰り返すと、新たな資料が必要になることがある。これをユーザに依頼すると、必要な資料はまとめて要求しろと叱責を受けることがある。資料を採取するのさえユーザにとっては負担であるというのは理解できるし、取り漏れがないような努力を欠かしてはいけない。しかし、どんなトラブルシューティングでも仮説・検証が基本であり、あとから追加資料を要求するのは避けられない。これを説明して納得していただくことも必要だ。 資料が必要な理由を全く説明せずに、資料送付だけを依頼することは、やってはならない。繰り返すが、人を動かすには理由が必要だ。

(続く)

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2005年10月20日

トラブル対応の基本プロセス(2) 期日とビジネスインパクト

ゴールが明確になったら、次に「期日」だ。重要なトラブルはもちろん、軽微なものであっても、いつまでに解決しなければならないという期日が必ず存在する。この点についてユーザと合意しておく必要がある。もちろん、ユーザは一刻も早くトラブルが解決することを望んでいる。しかしユーザの言い分を全て受け入れていてはにっちもさっちもいかなくなるから、妥協点を探らなければならない。

ユーザが「いつまでに解決して欲しい」と言ってきたら、まずその背景を確認する。システムの開発スケジュールが関係しているのか、本番業務の定期処理が迫っていてそれまでに解決する必要があるのか、などだ。問い合わせてきたユーザがシステムインテグレータのSEの場合、発注者であるエンドユーザが指示した通りに製品ベンダーへ問い合わせていて、背景をきちんと認識していないことがある。こういった場合は、エンドユーザに確認してもらう。

さらに「ビジネスインパクト」も明確にしておく必要がある。「ビジネスインパクト」とは、このトラブルが期日までに解決しない場合にどんな影響があるかを、ビジネスの観点で表現したものだ。たとえばシステム運用開始が遅れることで一日あたり○○万円の損失が出るといったように、金額で表現するのがもっともよい。発注元のエンドユーザ企業とシステムインテグレータの信頼関係にひびが入り、現在進行中の○○万円規模の商談がご破算になる可能性があるという言い方もある。

ビジネスインパクトは、あまり細かい数字にこだわらなくてよいが、根拠があって現実的な数字であることが条件だ。開発部門や経営層の注目を集めようと、あまり大きな数字を提示しても、逆効果だろう。このトラブルが解決しないと、契約済みの全製品がキャンセルになると大げさに言うと、「オオカミ少年」になりかねない。もちろん、本当にそういう事態であれば、納得できる材料をそろえる必要がある。

期日とビジネスインパクトは、開発部署や上層部などの協力を仰がなければならないとき、サポート部門が提示すべき情報だ。これらの人々は、顧客と密にコミュニケーションしているサポート部門と違い、個々のエンドユーザとのビジネス状況を知らない。開発部門が海外にある外資系ではなおさらだ。こういった情報を与えずに「大変だ」「緊急だ」と言っても、現実味のある話として受け取ってもらえない。人を動かすには理由が必要だ。相手が海外の人間の場合、これは特に重要である。

(続く)

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2005年10月19日

「業務性能」

10月18日に開催されたコグノスのプライベート=イベント「Cognos Performance 2005」に出席した。コグノスは、分析ソフト「PowerPlay」で有名なビジネス=インテリジェンスのベンダー。最近は、CPM(コーポレート=パフォーマンス=マネジメント)を前面に出して、単なる分析ツールのベンダーというイメージから脱却しようとしている。

基調講演や事例セッションも興味深かったが、お目当ては最後のパネルディスカッションだ。著名なITアナリスト2名、栗原潔氏と内山悟志氏による「アナリスト対決」である。栗原氏は、ガートナー時代にZDNet(現在のITmedia)に連載していた「Gartner Column」のメインフレーム技術解説が興味深かったので、それ以来、講演や記事を注目している。今回のアナリスト対決は栗原氏のブログで知った。

「業務性能」は、CPM(Corporate Performance Management)の「Performance」の訳語として、栗原氏が案出した言葉である。KPI(Key Performance Indicator)が「重要業績評価指標」と訳されているが、CPMを「企業業績管理」としてしまうと、単に売上げや利益の管理だけというニュアンスになってしまう。「業績」という訳語は、Performanceという言葉の持つ意味のごく一部しか表現していない。クルマにしろコンピュータにしろ、性能はチューニングできる。同様に、企業のパフォーマンスも、適切なデータ分析と意思決定でチューニングして、より高いレベルを達成できるはず。そういう意味で、「業務性能」という訳語をあてたとのことだ。

「業務性能」というのは、言い得て妙である。奇妙な感じがするが、使っているうちに慣れるだろう。漢字で書くことで、スペースも節約できる。

「Performance」という英単語は、「パフォーマンスレビュー」という言葉で、外資系の個人業績評価でも使われている。この場合に「業務性能評価」と言ってしまうとロボット扱いだから、「業務能力評価」とするとよいだろう。個人のパフォーマンスレビューは、その期の業績を評価するのが基本で、そのため「業績評価」と呼ばれることが多い。しかし、営業はともかく、仕事の過程や進め方を評価対象に加えた方がよい仕事も存在する。評価期間中に結果が出ない中長期プロジェクトがそうだ。そういうことも考えると、「業務能力評価」の方が適切な言い方だろう。

いずれ、「ビジネス=インテリジェンス(Business Intelligence)」の訳語も作り出さなければならないと思う。私は基盤系ソフトの経験が長いため、初めて「ビジネス=インテリジェンス」という言葉を聞いたときに、具体的に何をおこなう分野なのかピンと来なかった。ビジネス=インテリジェンスのベンダーがターゲットにしている経営者たちも、ITに精通している人は除いて、同じようなものだろう。経営層に訴えるためには、彼らの心に響く言葉が必要。ビジネス=インテリジェンスに限らず、新しい技術や文化を普及させるには、こういった配慮も欠かせない。

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2005年10月18日

トラブル対応の基本プロセス(1) ゴール設定

ソフトウェアに限らず、ビジネスにトラブルはつきもの。トラブルが起きないように手を打っていても、予想外の事態はかならず起きる。逃げていてもしょうがない。雨降って地固まるという言葉もあるように、うまく解決できれば、それまで以上の信頼を得ることも可能だ。この記事では、カスタマーサポートのマネージャの経験から、トラブル解決で守るべき基本プロセスを4回に分けて述べる。

なお、以下の記事では、トラブルを問い合わせてきた人を「ユーザ」、それを受け付ける人・部署を「サポート」と表現するが、この内容はカスタマーサポート部門に限った話ではない。システムインテグレータの現場SE(フィールドSE)や、ソフトウェアベンダーのプロフェッショナルサービスがトラブル対応する場合も、基本的に同じだ。また、技術的なプロセスを述べた部分以外は、営業やコンサルタントの仕事にも当てはまるだろう。

さて、トラブルを解決するために、現状把握力や製品知識、技術力が必要なのは当然だが、それよりも大切なことがある。それは「ゴール設定」だ。ゴールとは、そもそも「ユーザは何を達成したいのか」ということである。これを明確にしてユーザと意識を合わせておかなければ、いくら技術力があってもトラブルは収束しない。

「ユーザが達成したいこと」は、いままさにユーザが問い合わせてきているトラブルを解決することだと思うかもしれないが、それは早計だ。ユーザは、ビジネス上の要件を達成したくてその製品を使い、その過程でトラブルに遭遇して問い合わせてきている。したがって、「ユーザが達成したいこと」は、トラブルの背後に隠れている。まずそれを聞き出し、それを達成できるような解決策を提示するようにすべきだ。それができれば、単に問い合わせてきたトラブルを受動的に受け付けて解決したときに比べて、ユーザの満足度は高くなり、信頼を得られる。

別のケースもある。ユーザ自身がトラブルを解決しようといろいろ試してみて、そのあとで問い合わせてくるケースだ。製品が期待したとおりに動かないので別の操作をやってみたり、設定を試行錯誤したりし、「これが原因だろう」と推測して問い合わせてくる。問題は、その推測が当たっているかどうかだ。推測が外れている場合、そこに力をつぎ込んでも徒労に終わる。

トラブルを解決しようとして、別のトラブルに遭遇したケースも要注意だ。たとえば、別の設定を試したら新たな現象が発生してしまったケースや、再現テスト環境を作ろうとしたときに別のトラブルが発生するといったケースだ。そのトラブルに深入りすると、本来の問題が置いてけぼりにされてしまう。細かい部分をきっちりやるSEほど、その罠に陥りやすい。

したがって、トラブルの連絡を受けたら、現状を聞くとともに、「最終的に何を達成したいか」というゴールを確認する必要がある。そして、問い合わせ内容がゴールへの軌道上にあるか、それとも横道に逸れつつあるかを判断しなければならない。もし逸れているなら、いまやっていることをいったん白紙に戻して、何をすべきかを最初から考え直すといった軌道修正が必要である。木ばかりを見ていると、森の出口がわからなくなる。鳥瞰の視点を持つ必要がある。

とはいえ、現場でトラブルに忙殺されていると、なかなかそこまで頭が回らないのが現実だ。そういった場合は、同僚やリーダー、マネージャが第三者の視点でレビューすると効果的だ。そして「森を見る」ことを指導すれば、SEが成長するきっかけになる。

(続く)

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2005年10月17日

「大人のための読書法」

「大人のための読書法」の著者の和田秀樹氏は精神科医で、自称「少なくとも量に関しては日本屈指の文筆家 」である。本書は、本の選び方や読書法にとどまらず、本以外の情報源の利用方法まで取り扱っており、読書法の本というよりは情報活用術の本と言える。齋藤孝氏の「三色ボールペン情報活用術」と同じカテゴリーに入れてもいいだろう。さらに、つくり手の視点から本の選び方を提案している部分が興味深い。

本書を貫く考えは、「目的やコストパフォーマンスを意識し、完全主義に陥らず、必要な部分だけを熟読する」ということに集約される。

和田流の本選びは、自分の目的に合っているかどうかをタイトルと目次で判断し、気になったものはとにかく買ってしまうというものだ。なぜなら、本を選ぶのに時間を費やすくらいなら、他のことに時間を使った方がいいから。本代をケチるべきではないというのは同感だ。本選びに限らず、時間単価が高いビジネスパーソンはこういったコストパフォーマンスを意識しなければならない。

和田氏がこの本で勧める読書法は、必要な部分だけを読む「一部熟読法」である。目的を意識し、アウトプットすることを前提に、必要な情報をストックとして蓄積する。ストックする際は、立体的な見方(複眼思考)を持てるように、少数意見にもあたる。

日本では、物事をきちんと完璧にやり遂げる完全主義が尊ばれているが、その一方で完全主義者は、失敗をおそれて行動が遅くなったり、結局行動を起こさなかったりという欠点をあわせ持っている。読書も同じだ。本の頭から最後まで順番に読まなければならないという考えは、ひとまず捨てた方がよい。スピードが求められる現在のビジネス社会では、完全主義者であることのデメリットは大きい。実は私も完全主義者の傾向がある。スピード重視の外資系の環境にもまれて80点主義になりつつあるが、読書方法をはじめ、改善の余地はいくらでもある。

もちろん、買った本がハズレだということはあり得る。しかしどんな本でも、使える情報が少しくらい入っているものだ。それが手に入ったら、本に投資した価値はあったと考えるべきだろう。齋藤孝氏の三色方式のことばで言うと、緑の線がひければ十分と割り切ることだ。ハズレをおそれて読まないことのデメリットの方が遙かに大きい。

本を読んでストックした情報は、活用して初めて意味を持つ。活用できるかたちに情報を加工するには、アウトプットして使ってみるのが一番である。使えば使うほど、自分なりに情報が整理でき、さらに活用できるようになる。活用しない情報は、持っていないに等しい。

アウトプットの例が「書くこと」である。ブログでも日記でもなんでもいいから、書くことによって入手した情報を活用すると、さらに調べなければならないことが見えくる。これが新たな読書の手がかりになる。このサイクルがうまく回るようになると、その分野についての知識が雪だるま式に増えていく。齋藤孝氏のいう「暗黙知の海」に魚をたくさん入れておけば、関心の網に引っかかる魚も多くなる。

つくり手(著者、出版社)の心理を本選びに活かそうという提案が興味深い。同じ入門書でも、単に「~~入門」と書いてある本より、「世界一やさしい」「高校生でもわかる」というタイトルの方が、未知の分野を勉強する本として適当である。タイトルで読者層を明確に限定することによって、用語や表現が制約されるという意識を著者が強く持つからだ。あるいは、著者が言いたいことの大部分は第一章に書いてあるとか、著者の最新の考えは一番後ろにまとめてあることが多いとか、つくり手として大量の本を出版してきた筆者ならではのノウハウが披露されている。第一章と最後を読めばよいというのは、本選びや一部熟読に役立つ。

当ブログの関連記事
・三色ボールペン読書術・情報活用術
http://raven.air-nifty.com/night/2005/09/post_a46d.html

4047100137大人のための読書法
和田 秀樹


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2005年10月16日

ThinkPadのキーボード変革

IBMのPC事業がレノボに移管されて初の本格的な新製品、ThinkPad Z60tとZ60mが発売された。チタン色のトップカバーやマグネシウム合金の内部構造が注目されているが、私の最大の関心事はキーボードだ。

(参考記事)「“Z”に投入されたThinkPadの新技術」(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1006/lenovo.htm

Z60t/Z60mでは、マルチメディアコントロールキー、Windowsキーなど、これまでThinkPadがかたくなに拒んできたキーが搭載された。中でもWindowsキーは、拒否反応を示す人がパワーユーザを中心に多かった。その一部はマイクロソフトに対する嫌悪感から来るものだが、もう少し合理的な拒否理由は、最下段のキー配置が窮屈になることだ。Z60の写真を見ても、Altキーや変換キー、無変換キー、スペースバーが一段と小さくなっているように見える。

しかし、市場に出回っているほとんどのパソコンWindowsキーを採用しているため、このキーがないことでとまどうユーザが多くなってきているのだろう。再びコンシューマ市場へ参入しようとしているレノボとしては、妥当な選択といえる。

それに、Windowsキーはそれなりに使える。私自身、以前はWindowsキーなんていらないと思っていたのだが、会社で支給されたWindowsキー付きパソコンでは、けっこう活用している。スタートメニューの表示に使うほか、全ウインドウの最小化やそれを元に戻すショートカットキー(Windowsキー + D)も便利だ。

Z60は、堅牢性を高めるためにキーのパンタグラフ構造を強化した。タッチは変更していないとのことだが、こればかりは実際にさわってみないと何とも言えない。気になるのは剛性だ。最近のThinkPadは、キーボードの剛性が不足気味である。キーを押下したときに全体が沈み込む。個々のキーにぐらつきがあり、いまひとつ頼りない感触だ。きしみ音がし、動きがスムーズでないキーもある。キーボードが高評価を得ていたThinkPad 530CSや560のころには、こんなことはなかった。コストダウンや薄型化に伴って、キータッチは相当犠牲になっている。今回の構造強化がいい方向に働いてくれているといいのだが。

私にとって、Windowsキーの採用やパンタグラフ構造の変更より重要なのはキー配列だ。さいわい7列配置が踏襲された。私が一番こだわっているのが、この7列配置である。Home、End、PageUp、PageDownの4つのキーが独立した7列配置、つまりデスクトップの106キーボードと同じ配列のノートパソコンは、どんどん少なくなっている。上記の4つのキーをカーソルキーに割り当て、Fnキーとの併用で動作するようにしている。もちろんスペースを節約するためだ。

Home、End、PageUp、PageDownの4つのキーは、ファイルの中でカーソルをすばやく確実に移動するのに欠かせない。ファイルの先頭、ファイルの末尾へカーソルを移動したいというケースは多い。HomeやEndを使えば、Ctrl + Home、Ctrl + Endで一発だ。マウスでやろうとすると、スクロールバーをドラッグしたり、ホイールを延々と回したりしなければならない。

行頭にカーソルを位置づけたいのなら、Homeキーを1回押すだけで、確実にすばやくそこに位置づけられる。マウスの場合は、マウスポインタを行頭に置いてクリックするのだが、ちょっとずれると行全体が選択される。マウスの微妙な操作は、腕の筋肉に緊張を強いる。

このほか、私がよく使うキー操作は次の組み合わせだ。

・ Ctrl + Shift + End → ある位置からファイル末尾まで選択
・ Ctrl + Shift + Home → ファイル先頭からある位置まで選択
・ Shift + PageUp/PageDown → 広い範囲の選択(カーソルキーより高速)

これらの操作をマウスでやろうとすると、左ボタンを押したままドラッグしなければならない。ファイルが大きい場合など、その状態をずっと保たなければならず、右腕がつりそうになる。

もしHomeなどのキーがFnキー + カーソルキーの2キー同時押下だったら、3つか4つのキーを同時に押さなければならない。3つまでなら許容範囲だが、4つは大変だ。Ctrl + Home/Endも、同時に3キー押下より2キーの方が当然操作しやすい。独立したキーが必要なのはこのためだ。

レノボに移管されたThinkPadがどうなるのか少々不安だったが、キーボードに関してはZ60を見てちょっと安心した。これからの製品が楽しみだ。

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2005年10月15日

TOEIC 930点の勉強法(4、完)

最後に、私の経験から得た教訓は6つをまとめる。

1. 英語を身につけるのは簡単ではない。

まず、この当たり前の事実を認識しよう。ひとつの言語で固定化された脳を、別の言語に合わせてチューニングするのは、誰にとっても容易なことではない。裏を返せば、私と同程度の英語力は、誰でも身につけることができるということだ。

2. 相当な勉強が必要で、それに耐えられる強い動機が不可欠。

「いつか英語で会話ができるようになりたい」という程度の漠然とした動機では不十分。「いつ、誰と、どんな話をするために」英語を勉強するというくらいに、具体的なイメージを持つ必要がある。

3. 読解力(文法、構文解釈)が基礎だ。

この記事でいう英語力は、旅行英会話ではなく、仕事で使える英語力だ。まず、文法知識と構文解釈力をしっかり身につける必要がある。これが英語の「基礎体力」だ。これができているとリスニングやスピーキングも伸びるのはデータが証明している。
私は受験英語で鍛えたのだが、学生のころに英語の勉強をさぼっていた人も、いまからでも遅くはない。文法や構文は論理的にできているものだ。論理思考をビジネスの場で鍛えられている大人の方が、学生より習得しやすいともいえる。ソフトウェアを生業としているSEなら、なおさらだ。

4. シャドウイング、ディクテーションなどの勉強方法を知る。

トレーニング方法を知らずにやみくもにボールを打っていてもテニスはうまくならない。英語も同じである。シャドウイングなどは、通訳のトレーニングで使われている実績のある方法だ。最初のうちは舌がうまく回らずいやになるだろう。それにめげずに続けることだ。

(注)ディクテーションについては、「効果的な英語トレーニング方法(多聴と精聴、多読と精読) 」も参照。

5. 多読と精読、多聴と精聴を組み合わせる。

まずはインプットを増やすことが不可欠。いやになるくらい読んだり聴いたりすること。ピッチャーの投げ込み、ランナーの走り込みだ。これと併せて、ディクテーションなどで細かく聴き取ったり、英語で書くトレーニングをすること。アウトプットすると、自分の不得手な部分が見えてくる。そこを強化すれば全体のレベルが向上する。

6. 趣味と英語をうまく組み合わせ、楽しく勉強する。

英語を身につけるのは簡単ではないし、苦行のように聴きまくらなければならないこともある。、趣味に関係のある英語を読んだり聴いたりしてメリハリをつけよう。海外のWebページやポッドキャストなど、素材には事欠かない。

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2005年10月14日

TOEIC 930点の勉強法(3)

通信教育と平行して、海外ニュースの多読と精読に取り組んだ。私はテニスが趣味で、自分でプレーするのも、プロの試合を観戦するの好きである。しかし、日本の新聞にはテニスのニュースがほとんど載らない。せいぜいグランドスラム大会や日本で大会が開催されるときだけだ。

そこで目をつけたのが、ESPNやCBS SportsLine、CNN Sports Illustratedといったアメリカのスポーツメディアである。男子のATPツアーは2試合、女子のWTAツアーは1試合が、毎週コンスタントに世界のどこかで開催されている。その試合内容を詳しく書いた記事が、一日に何本も掲載される。これを読まない手はない。

全部の記事に目を通し、これはと思ったものを熟読する。さらに、要約して自分のホームページで取り上げるということを毎日やっていた。仕事で使う英語とボキャブラリーや表現が異なるが、たくさんの英語を読み、他人が読んでわかる日本語にできるまで理解する作業は、いいトレーニングになった。しかも、自分の趣味の分野だから、面白くてしょうがない。一石二鳥だ。

こういった勉強のおかげで、TOEICのスコアは順調に伸び、1999年に760(リスニング345、リーディング415)、2000年に855(L:420、R:435)、そして2001年に930(L:465、R:465)を達成した。

リスニングとリーディングのスコア配分が、私の英語の特徴をよく表している。多くの人は、リスニングのスコアがリーディングを上回る。私はずっとその逆だった。つまり、文法知識や構文解釈力に裏付けられたリーディング力がベースにあったうえに、通信教育で覚えた勉強方法でリスニング力を鍛えた結果、全体がスコアアップしたというわけだ。

リーディングのスコアの方が高い人は、少し勉強すればリスニングも上達すると言われたことがあったのだが、その通りだった。、同じことが桐原書店のWebに調査結果のデータとともに書いてある。興味深い内容なので、以下に引用した箇所以外も一読することを勧める。

(リーディングが250以上で、リスニングよりリーディングの方が高い人は)英語の潜在能力を秘めた状態です。英文は読めば分かる状態ですから、あとは耳を慣らすだけです。音読を採り入れたりしてリスニング力(発音練習も含め)を伸ばすことができます。

(続く)

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2005年10月13日

TOEIC 930点の勉強法(2)

まず英会話学校「ジオス」に通った。しかし、これはあまり役に立たなかった。ネイティブの講師と定期的に会話ができる場が持てたし、そのときの英語力でもけっこう通じるということがわかったという点では有意義だった。しかし、テキストの内容はすでに知っていることばかり。私が疑問に思っていた「aとtheの使い分け」などを論理立てて教えてくれる講師に巡り会えなかった。もう少しレベルの高い学校やクラスを選べばよかったのかもしれない。

それよりも力を入れたのは通信教育だ。アルクの「ヒアリングマラソン中級コース」を手始めに、「1000時間ヒアリングマラソン」「ライティングマラソン」「リピーティングマラソン」「スピーキングマラソン」を次々と受講した。朝夕の通勤電車の中はもちろん、朝食をとるマクドナルドやスターバックスで小一時間、終業後に喫茶店やレストランで小一時間。休日は映画館やレンタルビデオで映画を見たり、クルマに乗っているときはAFNをつけっぱなしにしたりと、とにかく英語漬けだった。最初の一年は、1年間で1100時間以上も英語を聴いた。

1年で1100時間聴くのは、かなりの苦行だった。他のことにはほとんど手が出せなかった。それでも、英語が使えるようになりたいという強い思いがあったから、きつい勉強に耐えられた。

「ヒアリングマラソン」は、英語をたくさん聴く習慣をつけたことのほかに、シャドウイングやリピーティング、ディクテーションなどの勉強方法を覚えられたのがよかった。いままでは、勉強方法も知らずに何となく英語を読み書きしていただけだった。

通勤電車の中で声を出すのははばかられるので、電車の騒音に紛れるくらいの小声でシャドウイングをやったり、声を出さずに口を動かすリップシンキングをやったりした。テキストのディクテーション=コーナーだけではもの足りず、そのほかのヒアリング教材も片っ端から聴き取っていた。聴き取れなかった部分をもう一度聴き返すために巻き戻しを繰り返すのだが、リモコンを相当酷使したため、3年間で5個も壊したほどだ。こんな使い方はメーカーの想定外だったろう。

余談になるが、MDプレイヤーは巻き戻しがすぐに始まらないし、巻き戻し量をうまくコントロールできない。ソニーとパイオニアでそうだったので、他のメーカも同じかもしれない。巻き戻しを多用するなら、CDプレイヤーの方がストレスがたまらなくてお薦めだ。

「ライティングマラソン」は実践的な内容で、実務にすぐに役立った。外資系でも、英語を「聴く・話す」機会より、「読み・書き」の方が断然多い。英文メールはごく当たり前だ。英語ビジネスライティングの基礎を勉強できる「ライティングマラソン」は、お薦めのコースである。メールがあまり普及していなかったころに開発された教材だが、ライティングの基本は変わらない。今風な内容がいいのなら、私は受講したことがないが、「ビジネスEメール速習パック ライティングエイド」というコースが適しているかもしれない。総合監修は「ライティングマラソン」と同じ染谷泰正氏だ。

(続く)

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2005年10月12日

TOEIC 930点の勉強法(1)

私のTOEICスコアは930だ。今日から4回に分けて、このスコアを獲得するまでの私の英語勉強法や、そこから得た教訓を書いてみよう。参考になることがあると思う。

私の英語の基礎は、受験勉強で鍛えられた「構文解釈」と「文法知識」である。高校生のときから英文解釈は得意で、大学の授業でテキストに指定された原書を読むのは苦にならなかった。

「書く」に関しては、大学二年生で履修した英作文の講義が大いに役に立った。先生は、単語の選び方ひとつも厳しく指導される方だった。英和辞典や和英辞典は、意味が似通った日本語を当てはめているだけだから、英単語の持つ本当のニュアンスはわからない。和英辞典で選んだ英単語は、容赦なく添削された。英英辞典をひき、英語の文脈に合う単語を選ぶ習慣を身につけたのがこのときだ。いまでも英語のメールを書くときに、英英辞典を使って意味を確認している。

「聴く・話す」の勉強は、学生時代にやった覚えがない。日本企業に就職したあと、「ヒアリングマラソン」を始めたことがあったが、一ヶ月かそこらで投げ出してしまった。仕事で英語を使う機会が全くなく、勉強する意欲が続かなかった。ちなみに私は出不精で、海外旅行に行ったのは27歳の時が初めてだ。顧客企業の方が海外の学会で発表するのに同行したのだが、ホテルのチェックインやリコンファームなど、英語を使う場面は彼に頼りっきりだった。

TOEICを初めて受験したのは1996年。これからは英語ができなければいけないという社長の号令のもと、全員が受験させられた。このときのスコアが610(リスニング285、リーディング325)。部内でトップだった。大学を卒業して以来、ほとんど英語を勉強することがなかったのに630というスコアを取れて、少しは自信になった。

このスコアの裏付けがあったからこそ、転職の時に外資系が選択肢に挙がったといえる。しかし、実戦で使ったことのない英語、つまり「畳水練」のようなものだから、本当に外資系でやっていけるのか不安だった。自信を持って英語が使えるようになりたい、いや、ならなければならないという強いプレッシャーが動機になって、猛勉強を始めた。日本企業にいたときとは、気合いの入り方が違っていた。

(続く)

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2005年10月11日

日本人の英語力の実態

海外の上司に日本人の英語スキルレベルを伝えるために、日本人一般の英語力を調べたことがある。参考にしたのは、全世界でおこなわれている英語力テストTOEFLの統計データだ。TOEFLを開発したETSが公開している2003~2004年の国別ランキングはこうだ。

Computer Based Test(CBT):148カ国中140位
Paper-Based Test:105カ国中100位

TOEFLは、海外留学を目指している人が受験するもののはず。留学と関係なく、自分の実力を試すためだけに受験している人が平均点を下げているとしても、ほぼ最下位というのはどうしたことだろうか。

英語の勉強が不足しているかというと、そんなことはない。矢野経済研究所の「教育白書」によると、英会話教育市場は2002年度で6700億円だ。2003年度は市場の定義を変更したため数字が下がっているが、それでも3750億円だ。2003年度の数字には、ラジオやテレビの英会話講座テキストや、書店で売っている英会話の本などの独習教材が含まれない。これらを加味すると、日本全体で1年間に4000億円以上のお金が英会話の勉強に費やされている。これだけ投資しているのに全世界でほぼ最下位とは、寂しくなってくる。

もちろんテストの点数が全てではない。TOEICの点数が悪いのに、実務で英語をばりばり使い、海外の人とタフな交渉をこなしている人を何人も知っている。しかしその一方で、テストで点数が取れる英語力は、文法やボキャブラリーの蓄積が基礎となっており、メールやレポートなどの書き言葉で決定的な差がつく。また、基礎がしっかりしていれば、ヒアリングやスピーキングの力も急速に伸びる。私がTOEICのスコアを930まで伸ばせたのは、まさに文法などの基礎ができていたからだ。

テストの点数を上げる努力は、決して無駄にならない。学習の動機付けとして目標スコアを設定するのもいいだろう。もちろん、テストという手段が目的化しないよう注意する必要はある。そして、「仕事で使える英語」を身につけるには、受験対策と別の勉強が必要だ。スポーツにたとえると、受験勉強はを基礎体力をつけるトレーニングで、仕事で使える英語は種目ごとのテクニックである。

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2005年10月10日

関心のフック

私は大学で理論物理を専攻したのだが、その一分野である宇宙論に「ジーンズ不安定性」という概念がある。宇宙初期の重力的揺らぎがどのようにして成長し、銀河などの構造を形成するに至ったかを説明するためのものだ。ジーンズ長以下の大きさの揺らぎは自然に消滅し、それ以上の揺らぎだけが成長する。ジーンズ長を直径とする球体の質量をジーンズ質量と呼び、それ以上の質量を持つ物体が重力成長により形成されるという。

同じような性質は、現代社会を支える様々な無形物にも見られる。その一つがお金である。ある一定以上の資金を持っている人や会社には、その資金を運用することによってさらにお金が集まってくる。お金を持っていない人は、低金利の預貯金程度でちまちまと増やすほかない。

以上は、「相対論的宇宙論」(佐藤文隆・松田卓也)に出てくる話であるが、情報や知識にも同じような性質があるようだ。新しい分野を勉強するとき、最初は知識や情報の少なくて苦労する。それにくじけずに勉強していくと、参考文献や関連資料などを通じていろいろな情報が集まってくるようになり、知識が雪だるま式に蓄積されるようになる。

このとき、ただ漫然と情報に接していては、学習スピードを十分に上げることができない。ポイントは問題意識を常に持つことだ。問題意識を持っていれば、新聞の書評欄や広告、書店の本棚、インターネットなどで、従来なら見逃していた本や記事が目に留まるようになってくる。

これは私の経験だが、製品のGUIの改善点を米国本社の開発者に説明しようと考えていたとき、会社にあった「日経バイト」の「UI変曲点」という特集記事を見つけて参考にしたことがある。「日経バイト」を定期購読していることすら知らず、たまたま雑誌架の前を通り過ぎたときに目に入った。問題意識を持っていたので、普段なら見過ごしていた情報が目に留まったのだろう。

セブン・イレブン会長兼CEOの鈴木敏文氏は、「関心のフック」とこれを表現している。

私は別に意識して(相手の共感を得るためのたとえ話を)集めているわけではなく、人の話を聞いたり、車内でラジオをつけっぱなしにしていたりするとき、頭の中のフック(釣り針)に無意識のうちに引っかかってくる。重要なのは、日ごろから「関心のフック」を研ぎ澄ませておくことです。 (「プレジデント」2005.8.1号)

また、齋藤孝氏は「三色ボールペン情報活用術」の中で次のようなことを述べている。人間の脳には、これまでに蓄積してきた経験的な知の蓄積、いわば「暗黙知の海」がある。情報と出合ったとき、感性の網を暗黙知の海にくぐらせて、情報を自分のなかに取り込むのが、情報活用の第一歩である。

問題意識は、関心のフックや感性の網、あるいはアンテナと言い換えることができるだろう。ひとつだけでなく、いくつかの関心のフックを持っていることが、情報収集に欠かせない。ひとつの関心のフックに引っかかった情報から新たな疑問や関心が生まれ、フックの数がどんどん増えていく。それにつれて、引っかかる情報が飛躍的に増加していく。「情報や知識のジーンズ不安定性」は、こういうメカニズムで説明できる。


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2005年10月 9日

スポーツクラブビジネスの将来

子どものころに読んだSF小説やSFマンガに、頭が非常に大きく、手足がひょろひょろとした宇宙人の絵がよく出てきたものだ。科学技術が発達して、反重力ナントカに乗って移動し、力仕事はロボット任せ。歩いたり物を運んだりする必要がなくなって、手足が退化したのだと説明されていた。

地球人がそんな状態になるとしても、それは相当先の話だろうから、われわれ現代人があれこれ心配する必要はない。しかし運動不足は切実な問題ではないだろうか。電車に遅れそうになってホームを走っただけで息切れするし、休日に町内のリクリエーションに参加したら筋肉痛で苦しむ。それもそのはず、近くのショッピングセンターへの買い物やレストランでの食事にクルマで行く。会社では、机の前に座ったままメールや電話で用が足せる。わざわざ相手の席まで歩いて行かなくてよい。技術の進歩とともに、自分の足を使う機会が減っている。運動不足になるのは当然だ。

使わなくなった肉体機能は退化するが、これは脳も同じ。脳を働かせずに楽させているもの。それはパソコンである。

用件をOutlookスケジュールに入れておけば忘れない。IMEが変換してくれるので漢字を書く必要がなくなり、文章作成速度もアップ。ずいぶん脳を使わなくてすむようになった。しかしその一方で、脳の退化は着実に進んでいるようだ。

私が最近悩んでいるのは、字が汚くなったことである。もともと字は汚い方なのだが、10年前に比べて明らかに下手になった。字画にメリハリがない。つなげるべきところをつなげていない。さらに悪いことに、一字とばして書いてしまうことが多くなった。頭の中はパソコンでタイピングする感覚で文章が流れているのに、手が追いつかないのだ。考えてみると、パソコンを仕事で使うようになったここ10年くらい、ミーティングのメモ以外、手書きの文書を全く書いていない。字を書くという運動をさぼっているわけで、その機能が退化してもしょうがない。

さて、現代人が運動不足を解消するのために、スポーツクラブというものがある。毎朝ジョギングするだけでよいのだが、自分の懐を痛めるのとそうでないのとでは、動機付けの強さが違う。無料でできるからと始めた苦しいジョギングは、一週間も続かない。それより、きれいなお姉さん(かっこいいお兄さん)のトレーナーがいるスポーツクラブで、セレブな気分で汗を流したい。かくして、スポーツクラブが立派なビジネスとして成立するわけだ。

その一方で、大人向けのパソコン教室も繁盛している。本人は仕事のためにやむを得ずやっているのだが、結局は、脳を退化させる方法(=バカになる方法)を、わざわざお金を払って習っているわけである。しかし、学校教育にパソコンが取り入れられ、パソコンの使い方に習熟した人間が増えるから、徐々にこのビジネスは衰退する。そうすると、反動で脳のトレーニングが繁盛するに違いない。

脳のトレーニングは、読み・書き・そろばんが基本である。音読ドリルで有名な川島隆太氏によると、人間を人間たらしめている脳の前頭前野を活性化させる原則は三つあって、読み書き計算、他者とのコミュニケーション、そして手指を使って何かを作ることだ。手指を使うといっても、パソコンや携帯でメールを書いてもだめ。前頭前野は全く活性化されない。手書きで書くことが大事だ(「プレジデント」2005.10.17号)。

つまり数十年後の日本では、本を音読したり、漢字を書き取ったり、そろばんや暗算をしたりという、寺子屋みたいな「脳のスポーツクラブ」が繁盛していると考えられる。川島氏の本やニンテンドーDSの「脳を鍛える大人のDSトレーニング」が売れているという話を聞くと、あながち妄想とも言い切れない気がする。

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2005年10月 8日

コダックのフィルムは美味?

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エプソンのフラットベッドスキャナGT-X750を手に入れ、友人にもらったプリント写真、雑誌のスクラップ、そして旅行の記念にとっておいたパンフレットや行楽施設の入場チケットなども、整理がてらデジタル化している。

マルタイ棒ラーメンの画像もスキャンしたものだ。フラットベッドスキャナはマクロ撮影機として使えるのである。カメラでの静物撮影はライティングに気をつかったり、手ぶれを防ぐために三脚を設置したりと、けっこう面倒。スキャナを使うと、簡単にきれいな静物撮影ができる。これはもともと山根一眞氏が雑誌「DIME」で披露していたアイディアだ。

さて、我が家に1990年前後に撮影したネガやポジが大量に保管してある。36枚撮りネガで100本以上。その当時、写真撮影に凝っていて、一眼レフ(ニコンF801やキヤノンEOS 630)で撮りまくっていた。これを徐々にデジタル化しようと思っている。真面目に取り組むと、1年以上かかりそうだが。

まずポジフィルムをスキャンしてみた。解像度など設定パラメータの組み合わせをいろいろ試した結果、2400bpiでDigital ICEをオンにした設定がよさそう。Digital ICEを使うとスキャン速度が遅くなるけど、ブロワーで取りきれない細かいホコリをうまく除去してくれる。スキャン中は本でも読んでいればいい。

ショックだったのは、保存状態が悪かったらしく、カビが生えているフィルムが何枚もあったこと。Digital ICEである程度除去できるが、青空の部分に生えているものは完全には取りきれず、画像処理ソフトで修整しなければならない。実はこういったこともあろうかと、Photoshop Elementsが付属しているGT-X750を選んでおいた。

たとえば右の写真。これは1990年に撮影した建設中のテレピア(名古屋市東区)だ。なぜか同じファイルの中でも、富士フイルムのフジクローム(RDP)が軽傷なのに、コダックのエクタクローム(右の写真もそう)は両面にカビがびっしり。カビはエクタクロームがお好き?

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2005年10月 7日

転職すると年収は上がるか?

「日経ITプロフェッショナル」2005年10月号の特集「2万人調査で浮き彫りになったスキル 年収 キャリアの実態」を読んだ。調査結果のうち、年齢層ごとにみた職種別の平均年収のグラフは、日経IT Proの「あなたは“将来”を選んでいますか?」に載っている。2003年の調査と比べると、職種の分類が細分化されていたり、細かい数値が載っていなかったりするのでそのまま比較できないが、コンサルタント、プロジェクトマネジメント、マーケティングの3職種が上位を占める点は同じだ。

この調査で興味深いのは、転職回数と平均年収の相関である。年収を上げるために転職するというのが一般的な図式だが、この方程式が当てはまるのは25歳以下と26~30歳だけ。この年齢層にしても、転職3回以上になると平均年収は下がる。31~35歳は転職回数に関係なく平均年収はほぼ一定。それ以上の年齢層では、転職経験者の年収の方が低い。

これは私の推測にすぎないが、実力のある人は転職によって年収増を勝ち取っているものの、ネガティブな要因(リストラ、実力不足、家庭の事情など)で転職を余儀なくされ、低い給与を受け入れざるを得なかった人の数が相対的に多く、それが平均年収を押し下げる要因になっているのではないだろうか。それ以外に、転職回数が多い人は、何か問題を抱えているのではないかと勘ぐられる可能性が十分にある。私自身、そういう視点で応募書類を見ているし、外資系マネージャ職の知人たちも同じ意見だ。結果的に、不利な条件が提示されることはあり得るだろう。

もうひとつ興味を引かれたのは、若い世代の離職率が高いことについて、CSKの有賀貞一取締役が指摘した言葉だ。

バブル以降の世代は、厳しい経済状況の中で、覚悟を決めてIT業界に入ってきている。退職金や年金にもあまり執着せず、自分の進むべき道を考えているエンジニアが多いのは当然だろう。

若い世代は、様々な不安要素を見聞きしている。たとえば、自分たちが定年を迎えるころは年金が十分にはもらえないかもしれないとか、企業の退職金制度が数十年後にどうなっているかわからないとか、そもそもいま働いている企業が定年まで存在しているかどうかさえ不透明だとか。その結果、年金や退職金に執着や希望を持てなくてもしかたがない。「自分の進むべき道を考えている」というのは、しっかりと自分の考えを持った若者が増えてきているというポジティブな見方ではなく、そうせざるを得ない状況に追い込まれていると考えた方が正しいのではないだろうか。

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2005年10月 6日

ココログの画像挿入デフォルト設定はまずい

過去記事の挿入画像の設定を変更した。写真の一部しか表示されていない可能性があることに気がついたからだ。

ニフティのブログサービス「ココログ」は、画像を挿入する場合のデフォルト設定で、「ポップアップウィンドウを表示してフルサイズの画像にリンク」という項目がオンになっている。この設定の場合、ブログを閲覧しているパソコンの画面サイズ(たとえば1024ドット×768ドット)を超える画像は、左上隅を起点とする一部しか表示されないのだ。ウインドウをスクロールすることも、画像ファイルをパソコンにコピーすることもできない。

この項目をオフにすると、スクロールして残りの部分を見ることができる。ブラウザがInternet Explore 6であれば、画像が自動的に縮小表示され、全体を一度に見ることができる。る。

私はいつも800ドット×600ドット程度に縮小した画像を挿入していたから、あまり影響はなかったはず。しかし、縦長の画像は見事に下半分が切れていた。たとえばマルタイ棒ラーメンの写真がそうだった。登録しなおしたので、いまは全体を見られるようになっている。

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2005年10月 5日

ポッドキャストの連続再生

iPodの欠点は、ポッドキャストのエピソードをひとつずつしか再生できないことだ。

たとえば「Wall Street Journal Tech News Briefing」は、ひとつのエピソードが3分くらいと短い。これをまとめて聴こうとすると、エピソードが終わるごとにiPodのクリックホイールを操作して次のエピソードを選択しなければならない。満員電車の中では無理。

iPodソフトウェアのアップデートで改善されないかと思っていたら、意外な解決策があった。プレイリストを使えばいいのだ。プレイリストに登録したポッドキャストは、曲と同じように連続再生される。

しかもiTunes 5.0から、スマートプレイリストの条件にポッドキャストを指定できるようになった。J-Waveのポッドキャストだけのプレイリストを作ったり、未再生のポッドキャストだけを集めて連続再生したりできる。しかも、エピソードをいちいち選んでプレイリストを作る必要がなく、iPodをパソコンに接続して同期するだけだ。

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2005年10月 4日

給料の相場、社員の場合は?

前回は社長の給料について書いた。では、社員の給料はどのくらいが相場なのだろうか。

「プレジデント」の同じ号に、従業員1000人以上の企業の世代別年収が載っている。出典は厚生労働省「賃金センサス(平成14年 賃金構造基本統計調査)」だ。

20~24歳 352万円
25~29歳 465.4万円
30~34歳 590.6万円
35~39歳 709.8万円
40~44歳 800.7万円
45~49歳 853.5万円
50~54歳 891.2万円

IT業界の賃金調査としては、「日経コンピュータ」と「日経ITプロフェッショナル」が共同で2003年11月におこなった調査結果がある。プロジェクト=マネジャ、コンサルタント、戦略立案・企画、SE、プログラマ、運用・保守の6つの職種に分けて調査したもので、このうちSEの年齢層別平均年収は以下の通りだ。

24歳以下 334万円
25歳以上 30歳未満 447万円
30歳以上 35歳未満 527万円
35歳以上 40歳未満 609万円
40歳以上 45歳未満 648万円
45歳以上 50歳未満 675万円
50歳以上 回答なし

(注)9月30日発売の「日経ITプロフェッショナル」10月号に、「あなたは「平均以上」と言えますか? 2万人調査で浮き彫りになったスキル 年収 キャリアの実態」として、最新の調査結果が出ている。

SEの給与を上回るのはプロジェクト=マネジャ、コンサルタント、戦略立案・企画である。全回答数の約2割のプロジェクト=マネジャとコンサルタントだけがが、厚生労働省の調査を上回っている。全体的にIT業界の給与は低めと言えそうだ。

これらの数字はあくまで平均だから、会社によってはかなり高額なこともあり得る。トヨタ自動車の40代後半なら1000万円は堅いらしい。野村総合研究所(NRI)は平均年齢35.7歳、平均年収が1030.8万円だ(日経BPの調査による)。

外資系企業は給料がいいというのが世間一般の認識だろう。それはある程度正しいが、福利厚生や退職金も含めて考えると、必ずしも外資系が有利とも言い切れない。社員食堂で食費を安くすませることはできないし、家族手当や住宅手当もない。社宅なんてお得なものもない。日本の大手IT企業に勤め、相場で月10万円以上の一軒家を、社宅として月2万円程度で借りていた人を知っている。

また、日本の大企業、たとえば富士通や日立製作所を定年まで勤め上げれば結構な額の退職金をもらえるのが普通だろう(今後のことはわからないけど)。しかし、外資系企業で定年まで数十年間働けることは滅多にない。そもそも、そんなに長い歴史のある外資系は日本IBMなどごく一部だ。退職金を当てにせずに生活設計する必要がある。

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2005年10月 3日

外資系の社長の給料はいくら?

毎週楽しみにしているJ-WAVE e-STATION SHUFFLE TASK BAR。第22回(9月2日)のテーマは、「同窓会とローン(ポッドキャスト版は「大人のお金」)だった。内容をかいつまんで言うと、学生時代の友達と久しぶりに集まり、仕事やプライベートの話をしているとき、どうしても切り出しにくいのが年収の話である。なぜなら、お互いの年収を聞いたとたん、何かが終わるに違いないという気がするから。「え、なんであいつが?」と。

会社でも、同僚同士で給料を教えあうことはない。ましてや、社長がいくらもらっているかを知っている従業員は皆無だろう。さて、実際はいくらもらっているのだろうか。

リクルートの無料情報誌「R25」9/23号に、社長の年収はいくらで誰が決めるかというコラムが載っている。産労総合研究所の調査結果によると平均3200万円だそうだ。

では外資系の社長はどうか。外資系ソフトウェア企業日本法人の社長の給料について具体的に記した興味深い本がある。GE関連会社や日本DEC、i2テクノロジーズなどの日本法人の社長を歴任した渡辺邦昭氏の「転職3回、30代で年収3000万円の社長になる」だ。それによると、これから日本で事業を拡大しようとする企業の場合、固定1200万円、インセンティブが1500万円から1800万円。日本に基盤がすでにできている会社の場合は、基本給が1800万円でインセンティブが1200万円というのが相場だそうだ。本のタイトルの3000万円というのはここから来ている。産労総合研究所の調査結果とあわせると、社長の給料は3000万円がひとつの目安と言ってよさそうだ。

もちろん、会社によって実態は大きく異なる。雑誌「プレジデント」2004.12.13号の特集「大公開!他人の給料袋」に、様々な企業の社長の推定年収が載っている。日本IBMの大歳卓麻氏が6016万円、マイクロソフト副社長(当時)の古川亨氏が5億5967万円である。これは高額納税者リストから推定したものであるから、給料そのものではなく、株式投資の収入なども含まれていると考えられる。すると、IBMの大歳氏は3000万円強~6000万円弱の間ということになりそうだ。

4484052075転職3回、30代で年収3000万円の社長になる
渡辺 邦昭


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2005年10月 2日

マルタイ棒ラーメン

20051002marutai
私と兄は鍵っ子で、土曜日の昼食は自分たちで作って食べていた。定番メニューはマルタイ棒ラーメンだ。マルタイは福岡市西区に本社を置く食品会社。私たち兄弟にとって、ラーメンといえば棒ラーメンだった。写真を見てわかるように、そうめんのような束になっている。麺が四角や丸に成形された「サッポロ一番」や「チャルメラ」は、高校生になるまで食べたことがなかったような気がする。

中学生のときは、アルミ製の弁当箱いっぱいにご飯を詰め、おかずは別のタッパーに入れていたくらいだったから、棒ラーメン一食分では足りない。ラーメンの麺を平らげたあと、蝿入らず(注)から冷やご飯を出して残ったスープに入れ、ほぐしながら食べるのがお決まりのコースだった。

(注)はいらず。蝿が入らないように網を張った戸棚で、広辞苑には蝿帳(はえちょう)として載っている。

夏は冷めんにしていた。棒ラーメンの包装袋に作り方が書いてあり、粉末スープと醤油や酢を混ぜてタレを作り、冷水で冷やしておいた麺にかけて食べるのだ。正直言うとあまりおいしいとは思わなかったのだが、「これが冷めんという食べ物か」と感心して食べていた。

魚肉ハンバーグも定番メニューのひとつだった。母が作る料理は昔ながらの家庭料理ばかりで、食卓にハンバーグが並ぶこともなかった。その結果、ハンバーグといえば魚肉製のものだと思いこんでいて、肉料理だと知ったのは、高校生か大学生になってからだった。冷蔵庫に常備している魚肉ハンバーグをスライスし、小さなフライパンに油をひいて、両面に焦げ目が付くまで焼くと、表面がパリッとして香ばしくなる。土曜の午後のちょっとしたごちそうだった。

今日の昼食はマルタイ棒ラーメン。イトーヨーカドーで見つけて、懐かしくて買ってきておいたのだ。子どものころと同じ味がした。

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2005年10月 1日

「インパクト倍増文章術」

「プレジデント」2005.10.17号は「書く技術」特集だ。樋口裕一氏による「『無視されないメール』の心理テクニック」や、「社長を出せ!」で有名になった川田茂雄の詫び状の書き方解説など、ビジネスライティングで大いに参考になる内容だ。

このうち、伊藤忠商事取締役会長の丹羽宇一郎氏によるトップ記事、「初公開! 丹羽宇一郎 インパクト倍増文章術」は、文章を書く7つのポイントがわかりやすくまとめられている。私の経験や考えを交えながら、7つのポイントをまとめよう。

いい文章を書くには、いい文章をたくさん読むこと。そもそも言葉というものは物真似から始まる。

たくさんインプットするのがアウトプットの大前提。多読と精読の記事で書いたように、英語の学習でも同じことが言える。あとで「キーワード」というポイントが出てくるが、たくさん読んだという蓄積があれば、いいキーワードを思いつきやすい。

ただし、インプットするものが偏っているとボキャブラリーや表現も偏るので注意。たとえばエンジニアはマニュアルやWebのサポート文書、ホワイトペーパーをよく読むため、書く文章がそれに似てくる(私の書く文章もそうかもしれない)。そこにちょっと気の利いた表現を入れれば、読者の印象に残る。そのためには、技術文書以外の本をたくさん読む必要がある。

日記でも本の感想でも何でもいいから毎日書いて、書くことに慣れる。「文章を書くぞ」という気負いがなくなり、素直ないい文章が書けるようになる。

たくさん書けば自動的にうまくなるわけではないが、とにかく書く習慣をつける必要があるのは間違いない。たくさん書きながら、自分に足りないものが何かを考えることが必要だろう。

講演やプレゼンテーションも同じで、いいプレゼンテーションをするには、場数を踏まなければならない。スポーツにたとえると、ボールの打ち方を習ったあとは、自分で実際にボールをたくさん打ち、自分の打ったボールがどんなふうに飛んでいったかを観察して修正することで、だんだんフォームができていく。この蓄積があってこそ、コーチのアドバイスが役に立つ。

簡潔に絞って書く。三つにまとめる。知っていることを全部書くようではだめ。

マジックナンバーの「3」はあまりにも有名なので、いまさら説明するまでもないだろう。2つでは不足、4つでは多い。

調べたことや知っていることを全部書きたいという気持ちはわかるが、それをやると、本当に伝えたいことが不明確になってしまう。あるいは枝葉末節の部分を突っ込まれて、話がどんどんそれていってしまうことになる。文章に限らず、商談やトラブル対応でも同じことが言える。

書いた内容を端的に表現できる、印象に残るようなキーワードを入れる。このキーワードが手がかりになって、筆者の書きたかったことが読者の脳裏に甦ってくる。講演でも同じ。

人間はあまりたくさんのことを覚えられないが、きっかけがあれば、それをもとに記憶をたどることができる。印象的なキーワードを入れるのは非常に効果的だろう。ただし、キーワードに懲りすぎて、キーワードは覚えているけど、結局何が言いたかったか覚えてないと言われるようではまずい。ここで試されるのは、いいたい内容をひと言でズバリと表現する「要約力」「言い換え力」だ。どちらも、社会人にとって大切な能力と齋藤孝氏が言っているものである。

ほかの部分は私にとって既知のことばかりだったのだが、このポイントは新鮮で収穫だった。

相手の立場に立って話の内容を考える。読み手が変われば、用語の使い方や項目が違ってくるはず。

これを「読者分析」と呼ぼう。伝えたいメッセージが同じでも、伝える相手によって表現のしかたが異なる。用語や項目はもちろん、文章やプレゼンテーションの構成も相手によって変える必要がある。

ビジネス文書では「結論を先に」という構成が基本である。しかし、自分の意見に明らかに反対の人を説得する文書でこれをやると、最初の段落で感情を害して、読むのをやめるか、最後まで読んだとしてもいい印象を持ってくれない。まず相手が共感できる内容で書き始め、自分の意見を補強する材料を使いつつ論を進める構成でなければならない。「外堀を埋める」という方法だ。

意見の裏付けとなるデータを入れる。数字は大雑把でよい。主観である意見と客観的なデータを区別する。

具体的であればあるほど意見は説得力を持つ。そのために裏付けデータが必須だ。本社へ出す要望を「この機能をソフトに盛り込めば、日本市場でたくさん売れるようになる」と書いても、開発責任者を動かすことはできない。具体的に何本売れて、いくらの売り上げになるかを書くのが鉄則。導出の根拠がきちんとしていて現実的な数字であれば十分だ。

「さおだけ屋はなぜ潰れないか?」に出てくるエピソードが参考になる。山田真哉氏がミステリー小説「女子大生会計士の事件簿」を出版社に最初に持ち込んだとき、「意外と読者は多いはずなんです」と言っても相手にされなかった。そこで、「会計士・税理士試験や簿記検定の受検者から推定すると、会計人口は300万人いる。そのうちの0.1%の人に受け入れられれば3000部は売れます」と言うと出版が決まった。

書き出しを工夫し、読み手の興味を引く。具体的な話がよい。

いわゆる「つかみはオッケー」である。読もうと思って自腹を切った本ならいざ知らず、一方的に送りつけられるメールを全部読むほどビジネスマンは暇ではない。まず「書き出し」で相手の心をつかみ、先を読もうと思わせる必要がある。メールなら件名だ。そんなに凝る必要はない。「~~はなぜなのだろうか?」と疑問形で始めるのもひとつのテクニックだ。もちろん相手が興味を示す疑問でなければ効果はない。そのために読者分析が重要である。

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