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2005年10月 9日

スポーツクラブビジネスの将来

子どものころに読んだSF小説やSFマンガに、頭が非常に大きく、手足がひょろひょろとした宇宙人の絵がよく出てきたものだ。科学技術が発達して、反重力ナントカに乗って移動し、力仕事はロボット任せ。歩いたり物を運んだりする必要がなくなって、手足が退化したのだと説明されていた。

地球人がそんな状態になるとしても、それは相当先の話だろうから、われわれ現代人があれこれ心配する必要はない。しかし運動不足は切実な問題ではないだろうか。電車に遅れそうになってホームを走っただけで息切れするし、休日に町内のリクリエーションに参加したら筋肉痛で苦しむ。それもそのはず、近くのショッピングセンターへの買い物やレストランでの食事にクルマで行く。会社では、机の前に座ったままメールや電話で用が足せる。わざわざ相手の席まで歩いて行かなくてよい。技術の進歩とともに、自分の足を使う機会が減っている。運動不足になるのは当然だ。

使わなくなった肉体機能は退化するが、これは脳も同じ。脳を働かせずに楽させているもの。それはパソコンである。

用件をOutlookスケジュールに入れておけば忘れない。IMEが変換してくれるので漢字を書く必要がなくなり、文章作成速度もアップ。ずいぶん脳を使わなくてすむようになった。しかしその一方で、脳の退化は着実に進んでいるようだ。

私が最近悩んでいるのは、字が汚くなったことである。もともと字は汚い方なのだが、10年前に比べて明らかに下手になった。字画にメリハリがない。つなげるべきところをつなげていない。さらに悪いことに、一字とばして書いてしまうことが多くなった。頭の中はパソコンでタイピングする感覚で文章が流れているのに、手が追いつかないのだ。考えてみると、パソコンを仕事で使うようになったここ10年くらい、ミーティングのメモ以外、手書きの文書を全く書いていない。字を書くという運動をさぼっているわけで、その機能が退化してもしょうがない。

さて、現代人が運動不足を解消するのために、スポーツクラブというものがある。毎朝ジョギングするだけでよいのだが、自分の懐を痛めるのとそうでないのとでは、動機付けの強さが違う。無料でできるからと始めた苦しいジョギングは、一週間も続かない。それより、きれいなお姉さん(かっこいいお兄さん)のトレーナーがいるスポーツクラブで、セレブな気分で汗を流したい。かくして、スポーツクラブが立派なビジネスとして成立するわけだ。

その一方で、大人向けのパソコン教室も繁盛している。本人は仕事のためにやむを得ずやっているのだが、結局は、脳を退化させる方法(=バカになる方法)を、わざわざお金を払って習っているわけである。しかし、学校教育にパソコンが取り入れられ、パソコンの使い方に習熟した人間が増えるから、徐々にこのビジネスは衰退する。そうすると、反動で脳のトレーニングが繁盛するに違いない。

脳のトレーニングは、読み・書き・そろばんが基本である。音読ドリルで有名な川島隆太氏によると、人間を人間たらしめている脳の前頭前野を活性化させる原則は三つあって、読み書き計算、他者とのコミュニケーション、そして手指を使って何かを作ることだ。手指を使うといっても、パソコンや携帯でメールを書いてもだめ。前頭前野は全く活性化されない。手書きで書くことが大事だ(「プレジデント」2005.10.17号)。

つまり数十年後の日本では、本を音読したり、漢字を書き取ったり、そろばんや暗算をしたりという、寺子屋みたいな「脳のスポーツクラブ」が繁盛していると考えられる。川島氏の本やニンテンドーDSの「脳を鍛える大人のDSトレーニング」が売れているという話を聞くと、あながち妄想とも言い切れない気がする。

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