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2005年11月 8日

「CPU集約的な」ビジネスアプリケーション

IT業界のパンフレットやホワイトペーパーでよく見る、よく意味のわからない言葉に「○○集約的」というものがある。Googleで検索した結果からいくつかを無作為に引用してみよう。

単純なアプリケーション (CPU 集約的なアプリケーション) の場合は、CPU 使用率を確認し、その値が低い場合で、アプリケーションの応答時間が想定時間内である場合には、Maximum Active Requests の値を大きくできる場合もある。
「J2EEアプリケーションの効果的パフォーマンスチューニング」
http://sirius.itfrontier.co.jp/jrun/pdf/jrw2/jrw_s4.pdf
追加の帯域幅により、CPU及びメモリ集約的なビジネスアプリケーションは元より、今日の要求水準の最も高い3D及びデジタルメディアアプリケーションのパフォーマンスも増強されます。
「VIA K8T800 Proチップセット、新世代AMD Athlon64プロセッサに最適化され、1GHz HyperTransportテクノロジI/Oバスを正式にサポート」
http://www.viatech.co.jp/jp/news/PR040601K8T800Pro-939-jpn.jsp
例えば、Linuxクラスターといったハイパフォーマンスが要求される分野や、物理シミュレーションなどを行う科学技術計算の分野、膨大なデータを解析して財政に関するクリティカルな意志決定を行うビジネスの中枢など、データ集約的なアプリケーションを活用する場面において、その優れたパフォーマンスを発揮します。
「IBM eServer xSeries 382」
http://www-06.ibm.com/jp/servers/eserver/xseries/product/x382/index.shtml

これらの文を読んだ日本人のうち、「CPU集約的」とはどんなことかをきちんと理解している人が何人いるのだろうか。私が初めてこの手の訳語を見たときは、さっぱりわからなかった。広辞苑によると、「集約」とは「集めてまとめること」だ。サーバを統合するというのとは違うようだし、「CPUを集めてまとめる」が何を指しているのかイメージがわかなかった。

しばらくして、これは「労働集約的産業」と同じ用法だと気がついた。自社の製品パンフレットを翻訳していて、「storage-intensive」という言葉に遭遇したときだ。もしやと思って調べてみると、CPU集約的は「CPU-intensive」、「メモリ集約的」は「memory-intensive」の訳語だ。

つまり、「labor-intensive」が「労働集約的」だから、それを応用して「CPU集約的」といった訳語を作り出しているようだ。「労働集約的産業」は、「人的労働の投入率が他の生産要素に比べて高い産業。農業・商業・サービス業・軽工業など」(広辞苑)である。つまり「CPU集約的」は、「CPUの使用率が他のアプリケーションに比べて高い」という意味らしい。なるほど、そう思って読み直すと意味が通じる。

ちなみにCNETやZDNetは、日本語版のニュースから原文にリンクが張られているので、訳文の対照研究に便利だ。また、海外製品の日本語マニュアルに意味不明の部分がある場合、英語版マニュアルの対応部分を読むと疑問が氷解することも多い。

「○○集約的」と同じように、「deploy」の訳語としての「配備する」もよく見かける。

Java 2 Standard Edition (J2SE) では、デスクトップ上でクライアント側に Java アプリケーションを配備するために、次の 2 種類の配備用テクノロジを利用することができます。
「Java配備の概要」
http://java.sun.com/j2se/1.5.0/ja/docs/ja/guide/deployment/deployment-guide/overview.html

言わんとすることはわかるが、どうも違和感がある。日本のIT業界で普段使われている「展開する」「導入する」という言葉を使った方がいいだろう。「配備する」という言葉からは、兵隊や武器装備を移動・配置することのような印象を受け、IT製品の文書に出てくると変な感じを受ける。

海外製品の日本語版パンフレットは、字が多くて読みにくいだけでなく、直訳調の文章で読みにくいことが多い。それに加えて「CPU集約的」などという馴染みのない言葉を使うと、ますますわかりにくくなってしまう。これでは、製品パンフレットの本来の役割を果たせないのではないだろうか。ついでに言うと、上で挙げた例文の中の「追加の帯域幅」も、わかりやすい日本語に書き換えた方がよい例のひとつだ。

とはいえ、「○○集約的」も「配備する」も、すでに非常に多く使われている。徐々に市民権を得ていくのかもしれない。

(関連記事)
ユーザに「透過的な」機能
http://raven.air-nifty.com/night/2006/05/post_e9d4.html

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コメント

英語が苦手なのに、技術書翻訳中のものです。
CPU集約的に疑問に違和感を持っていましたが、
このコメントによりすっきりしました。
ありがとうございます。

投稿: mia | 2007年10月17日 11時06分

上の方に同じく。ありがとうございました(笑)。

投稿: | 2010年5月23日 10時19分

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