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2005年11月25日

わかりやすい文を書くコツ(使役と受身)

製品パンフレットやマニュアルを見ると、「~させます」「~させることができます」という使役表現がとても多くて気になる。例を2つ挙げよう。

メンバー共通の顧客データベースのマスターにもなる共有アドレス帳です。IP 電話を起動させてインターネット電話をかけられるなど便利機能が充実。
「サイボウズ Office 6」
http://office.cybozu.co.jp/cb6/seihin/kihon/index.html
大切なデータをインターネットディスクから取りだして、すぐに復旧させることができます
「ジャストシステム インターネットディスク」
http://internetdisk.jp/guide/

それぞれ、「IP電話を起動して」「復旧できます」と書いても全く問題ないし、その方がより強く意味が伝わる。この2つはあくまで一例であって、同じような使役表現は非常に多い。

使役表現が多いのは、言い切る勇気の欠如が原因ではないだろうか。「~します」「~できます」と言い切ると、反論されそうで怖い。あるいは何事にも例外があるから、言い切ることができない。要するに「逃げの姿勢」が裏にあるように思う。

広辞苑によると、「させる」には放任・許容という意味もある。書き手が使役のつもりで使っても、読む人はその背後に放任・許容のニュアンスを感じ取り、無責任であいまいな印象を受けるのだろう。

同じように、受身表現も多く見かける。「SEを極める最強仕事術」は、チェックポイントのひとつに受身表現を挙げている。例として「Select文を入力すると、データが検索される」を、「Select文を入力すると、データを検索できる」と書き換えるべきだとしている。この例文のように文全体が受動態になっているもののほか、名詞を修飾する受身表現も気をつけたい。

  • 完全に自動化されたシステム リカバリ
  • パーティションの設定がなされたLotusサーバーやLotusクラスタリングをサポート
  • 一元化されたバックアップ オペレーション
「VERITAS NetBackup 6.0」(PDF)
http://eval.veritas.com/ja/JP/downloads/pro/nbu6_bro.pdf

これらは、能動態を使って次のように書き換えると印象が強くなる。


  • システムリカバリを完全に自動化

  • パーティションを設定したLotusサーバーやLotusクラスタリングをサポート

  • バックアップオペレーションを一元化

受身は動作の主体があいまいになる。これも一種の「逃げの表現」である。また、英語のパンフレットを翻訳するときに、学校で習ったやり方で機械的に日本語に置き換えると、上記のような日本語になる。つまり、過去分詞で修飾した「automated recover」を、そのままの語順で訳すと「自動化されたリカバリ」と受身表現の形容詞ができあがる。

使役も受身も、文章にメリハリをつけたり変化をつけたりするために、使うべきところには使わなければならない。大切なのは、「させる」(使役)「される」(受身)をその部分で使うのが適当か、文章全体で使いすぎていないかなど、十分に推敲することだ。

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