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2005年11月10日

Single Point of Failure

コンピュータシステム関連の英語文書でよく見かけるけど、一般に馴染みのない言葉に「Single Point of Failure」というものがある。信頼性に関する記述によく現れる言葉で、その部分が故障(failure)すると、システム全体が停止するような箇所のことだ。

たとえば、運用系と待機系からなる冗長構成を採用していても、電源が一系統しかなければ、停電したときにシステム全体が停止してしまう。あるいは、全てのLAN配線が最終的に1台のハブに集約されている場合、そのハブが壊れると全ネットワークが停止する。このような弱点を持つポイントを「Single Point of Failure」と呼ぶ。

残念ながら、この概念に対する日本語の用語はきちんと定まっていないようで、さまざまな言葉が使われている。たとえば略語で「SPOF」と表記しているものがある。初出時に説明しているものの、これはあまりいいやり方ではない。長ったらしい英語を短く表記するにはいいのだが、意味を読者に伝えようという努力を怠っているような感じがする。これは、CPM・ERP・CRMなど、業界に溢れている略語全てに言えることだが。

英辞郎では「シングルポイント障害」という訳語をあてていて、これを使った文書もGoogleで見つかる。しかしこの言葉だと、弱点のある箇所ではなく障害そのものに焦点が当たっていて、概念とずれているように思える。

共通理解とまでいかないものの、「単一故障点」「単一障害点」という言葉が現時点では主流のようだ(下記参照)。Googleで検索してざっと眺めた範囲では、航空宇宙産業で「単一故障点」という用語がよく使われているようだ。技術者向けの文書で使うなら、この「単一故障点」「単一障害点」がよいだろう。ただし現段階では注釈が必要だ。

デザインを考える場合、気をつけなければならないのは、単一障害点(Single Point of Failure)の存在です。単一障害点とは、ある一点に障害が発生した場合に、システム全体、もしくは、システムの一部が停止してしまう障害を意味しています。
「ストレージ エリア ネットワーク その技術と将来動向 ~基礎講座~」
http://www.brocadejapan.com/storagecompass/snkk/snkk_3.html
冗長系システム内に単一故障点が存在していないかを確認するため、詳細設計情報を再確認すること。また、冗長系確認試験の妥当性について確認すること。
「陸域観測技術衛星(ALOS)の総点検に関する審議結果」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/uchuu/reports/05010401.htm

問題は、ユーザ向けのパンフレットである。海外の製品パンフレットに「Single Point of Failure」と書いてあるからといって、それを日本語に訳したパンフレットに「単一障害点」と書くと、ほとんどのお客様は面食らってしまうだろう。文脈から意味をつかんでもらえるだろうが、馴染みのない専門用語を製品パンフレットに使うのは、顧客視点から考えて避けたい。

私は、一般の人向けの文書で「信頼性の急所」という訳語を使うことにしている。「急所」は、「身体の中で、そこを害すると生命にかかわる大事な所」(広辞苑第五版)である。なかなかいい訳語だと、一人で悦に入っている。いまのところGoogleで見つからない。もしこの言葉が使われるようになったら、インターネットでの「第一声」はこのブログということになる。ちょっとした自己満足的楽しみである。

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コメント

大変参考になりました。ありがとうございました。防災関係の文書でこの単一障害点が出てきました。

投稿: | 2008年12月13日 22時57分

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