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2006年5月の3件の記事

2006年5月30日

ThinkPadのプレゼンテーション・ディレクター

ThinkPadには「プレゼンテーション・ディレクター」というソフトが付属している。文字通り、プレゼンテーションを支援するためのソフトである。Fn + F7キーでメニューを呼び出し、液晶のみ表示するモードやプロジェクター・液晶の同時表示モードなど、複数の表示モードを簡単に切り替えられる。

メニューの中に「液晶ディスプレイとプロジェクターでのプレゼンテーション(XGA)」というモードがある。これまで使ったことがなかったのだが、試しに使ってみて感激。いままでせっせと手作業でやっていた準備や後始末をなくすことができる。

普段使っているPCでプレゼンテーションすると、PowerPointスライドを全画面表示しているときはいいのだが、スライドを終了したときにデスクトップやエクスプローラの画面が見えてしまう。ファイルのアイコンが散乱しているのは見栄えが悪いし、聴衆に見られるとまずいファイル名も中にはある。たとえば「○○システムトラブル報告書.doc」といった障害報告書、「△△リリーススケジュール.xls」という発表前の製品名称などだ。

私はこれまで、プレゼンで使うファイル以外は別のフォルダに放り込んで見えなくしてしまうことにしていた。終わったあとに元と同じ配置に並べ替えるのだが、きわめて非生産的な作業だった。

自動的に起動してしまうソフトも要注意だ。たとえば、ATOK Sync。私は、毎日12時に会社のPCと自宅のPCでATOKの辞書を同期している。午前中のプレゼンが少し長くなると、毎日12時のスケジュールでATOK Syncが起動してしまい、説明中のスライドにかぶってしまう。常駐しているスケジュール管理ソフトが、アラームを表示してしまうこともあるだろう。

「液晶ディスプレイとプロジェクターでのプレゼンテーション(XGA)」モードは、デスクトップを全く表示しないモードである。専用のファイル選択ダイアログで選んだアプリケーションだけが表示される。タスクバーやタスクトレイのアイコンも見えない。いくらデスクトップが散らかっていても、このモードを使えば安心だ。

プレゼンテーション・ディレクターのモード切り替えは、画面表示方法の切り替えだけでなく、画面輝度や省電力設定も同時に変更する。これも重宝する。

聴衆がスクリーンを見やすいように部屋を暗くすると、液晶ディスプレイの照明が講演者を照らし出して目障りだ。プレゼンテーション・ディレクターのプレゼンテーションモードは、画面輝度が数段階、自動的に低くなる。

またノートPCは、バッテリ駆動時に数分間操作しないでおくと、自動的にスタンバイモードに移行して電源が切れる設定になっていることがある。これをそのままにしておくと、同じスライドで長時間話しているうちに、PCが勝手にスタンバイモードになってスクリーンが真っ黒になってしまう。プレゼンテーション・ディレクターはThinkPadの省電力機能と連携し、バッテリ駆動でもスタンバイしない省電力設定に自動的に切り替えてくれる。

テックバイザージェイピーの栗原潔氏は、プレゼンテーション専用のユーザアカウントを作るという案をブログに書いている(参考記事)。私も何回か試したのだが、この方法の欠点は、普段と異なるWindows環境になってしまうという点だ。プレゼンテーションを修正したくなっても、IMEのユーザ辞書がほぼ初期状態なので、うまく変換できずにいらいらする。プレゼンテーション・ディレクターは、普段使っているアカウントを使えるから、作業効率はそのままだ。

まさに至れり尽くせりである。このような便利なソフトがどのモデルでも使えるというのもすばらしい。機種を変えても、同じことが迷わずにできる。ThinkPadを使い始めると他のPCに移れなくなる理由は、こんなところにもある。

(参考記事)
栗原潔のテクノロジー時評Ver2「自分のPCでプレゼンをする時の注意事項」
http://blogs.itmedia.co.jp/kurikiyo/2005/11/pc_7ab9.html

(本ブログの関連記事)
効果的なプレゼンとデモのヒント
http://raven.air-nifty.com/night/2005/10/cognos_performa_c0e2.html

聴衆をひきつける講演タイトルの付け方
http://raven.air-nifty.com/night/2005/11/post_8dc5.html

講演時間の注意点
http://raven.air-nifty.com/night/2005/11/post_23ed.html

講演資料を事前に配布するべきか
http://raven.air-nifty.com/night/2005/12/post_2ab2.html

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2006年5月13日

ユーザに「透過的な」機能

「○○集約的」と同じく、「透過的」という訳語もIT業界のカタログやホワイトペーパーででよく見かけるが、いまひとつ意味がわからない言葉のひとつだ。いくつか例を挙げる。

IBM DB2 Universal Databaseをアプリケーションに透過的にインストールする
http://www-06.ibm.com/jp/software/data/developer/library/techdoc/installtranspa.html
DB2インストール・プロセスを透過的にインストール・プロシージャー内に組み込むのにも役に立ちます。

透過的なネットワークの復元: 第1回
http://www-06.ibm.com/jp/developerworks/java/021206/j_j-transnet.html
内部ネットワークのマシンから送られたパケットを透過的に書き換えます。

上に挙げた2例の原文をIBM本社のWebサイトで探してみた。これらの翻訳文書の「透過的」は、「transparent(ly)」の訳語である。

Installing IBM DB2 Universal Database Transparently with Your Application
http://www-128.ibm.com/developerworks/db2/library/techarticle/0306gao/0306gao.html
but also for embedding the DB2 installation process transparently inside your own installation procedure.

Restoring the transparent network, Part 1
http://www-128.ibm.com/developerworks/library/j-transnet/?n-j-1032
The NAT gateway transparently rewrites packets sent from machines on the internal network

しかし、日本人が「透過的」というときは、何かが光などを通すという意味を表すのが普通だから、上に挙げたような使い方は今ひとつしっくり来ない。ちなみに広辞苑と大辞林は、「光線が物質内部を通り抜ける」という意味だけを載せている。

実は「transparent」にはIT業界独特の意味があるのだ。「リーダーズ英和辞典第2版」と「英辞郎」はそれを解説している。リーダーズ英和辞典の記述はこうだ。


3 【電算】〈プロセス・ソフトウェアなどが〉透明な, トランスペアレントな《利用者にその存在が意識されない》.

私が自分で翻訳したり翻訳チェックしたりするときは、「透過的」を使わないようにしている。では、どうするかというと、上の2例の場合は次のように訳す。

  • DB2インストール・プロセスを、アプリケーションに影響を与えずにインストール・プロシージャー内に組み込むのにも役に立ちます。
  • 内部ネットワークのマシンから送られたパケットを、パケット内のアプリケーションデータに影響を与えずにヘッダ部分を書き換えます

全文をきちんと読んでいないが、だいたいこういうことが言いたいのだと思う。「transparently」は、上の書き換え例のように「影響を与えない」と訳した方がわかりやすい。場合によっては、「何に」影響を与えないか言葉を補う必要がある。

そのほか、「ユーザに透過的に○○をおこなう」という使い方もよく見かける。製品カタログなどのマーケティング資料が頻繁に使う用法だ。Webサイトでの用例を2つ挙げよう。

SAS/ASSIST
http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/software/assist.html
プロファイルをカスタマイズすることで、多くの作業をユーザに透過的にし、さまざまな人が自分が最も使いやすい方法で同じアプリケーションを使用できます。

セキュリティ管理 基本のトレードオフ
http://www.microsoft.com/japan/technet/community/columns/secmgmt/sm0104.mspx
情報技術の究極の挑戦は、目に見えないようになることです。完全にユーザーに透過的であることです。

これらは、「その処理がおこなわれていることをユーザが意識しなくてよい」「ユーザに知られないように処理する」という意味だ。

「影響を与えない」という意味での「transparent」の使い方はIT業界独特で、専門用語と言っていいと思う。開発者向けの技術文書ならまだしも、一般ユーザ向けのカタログでは使わない方が無難である。

英語圏では、IT業界の「transparently」の意味を正しく理解できているのだろうか。興味あるところだ。

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2006年5月 2日

Office文書による情報漏洩を防ぐ

PCのデスクトップにWordやExcelのファイルをコピーし、その上にマウスカーソルを置いて数秒そのままにしてみよう。タイトル・作者・作成日付などのプロパティ情報が表示されたはずだ。ファイルのプロパティをきちんと入力していれば、わざわざファイルを開かなくても内容がわかる。非常に便利な機能である一方、情報漏洩の危険も秘めている。

WordやExcelの白紙状態から文書を作ることは意外と少ない。すでにある文書を流用し、追加・削除・変更して手間を省くのが賢いやり方だ。しかしOfficeには、情報漏洩につながる機能が2つある。1つは最初に書いたファイルのプロパティ、もう1つは変更履歴だ。

Wordのプロパティの「タイトル」欄には、最初に入力した文が自動的に入る。そして、意図的にプロパティを編集しない限り、流用先の文書にも引き継がれる。以前のWindowsでは、文書を受け取った人が意図的にプロパティを見ない限り、その内容を知られることはなかった。しかし最近のバージョンの「親切な」機能により、ファイルのプロパティとは何かを知らない人でも、自然とその内容を目にするようになってしまった。

社外文書は、左上に相手の社名を書くのが一般的なマナーだ。つまりユーザ名が文書のプロパティに仕込まれることになる。ある取引先向けに作った文書を流用して別の取引先に送ると、ほかにどんな会社と取引しているかばれてしまう。これが競合会社だったり、取引を公にしたくない会社だったりとすると、非常にまずいことになる。

あるいは、トラブル報告書のプロパティに「○○社様△△システムにおけるシステムダウンについて(ご報告)」などという件名が入っていると、どこの会社でどんなトラブルが起きているかが第三者に知れ渡ってしまうことになる。これは実際に私の周りで起きたことがある。

2つめの変更履歴は、誰がどこをどのように修正したかを記録する機能だ。文書レビューで重宝する反面、変更履歴を見れば、以前何が書いてあったかが第三者にわかってしまう。これも情報漏洩につながる。文書のタイトルだけでなく、以前の内容が完全に復元できるから、その危険度はプロパティの比ではない。

したがって、Officeファイルをメールで社外に送るときは、プロパティや変更履歴をきちんと削除してから送信する必要がある。しかし、急いでいるときは、うっかり忘れてしまいがちだ。特にトラブル報告書は、提出期限までに納得できる内容のものを送らなければ火に油を注ぐから、ぎりぎりまで調査した結果を盛り込もうとする。急いでいるから、プロパティや変更履歴まで気が回らない。メールで送ったあと気がついても手遅れだ。

これらの情報漏洩を防ぐには、PDFに変換して送信するのが一番と考えられているが、必ずしもそうではない。確かに変更履歴やコメントなどは削除される。しかし、変換ソフトの設定によっては、Officeファイルのプロパティ情報がPDFの文書情報に引き継がれてしまう。たとえばAdobe Acrobat 7.0 ElementsのPDFMakerは、デフォルトでOfficeのプロパティ情報を引き継ぐようになっているので注意が必要だ。ちなみにPDFも、作成者の名前や作成日付が文書情報に書き込まれている。Adobe Acrobat Elementsには、作成者を書き込まないようにする設定がある。

なおOffice XPや2003には、プロパティの個人情報などを削除する機能がある(「オプション」→「保存」→「保存するときに個人情報をファイルのプロパティから削除する」をチェックしておけばよい(参考記事)。

(参考記事)
Office Word 2003 文書作成テクニック ファイルにある個人情報を削除したい!
http://www.microsoft.com/japan/office/experience/workstyle/tips/word/tips4.mspx

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