「条件がわからないので見積もれません」
商談についての社内打ち合わせで、「条件がわからないので見積もれません」と、あるSEが発言したことがある。商談のごく初期段階であり、ユーザの利用環境が明確でなかったから、この言葉はいちおう正しい。しかし、それはジュニアSEならば、という条件付きだ。
そもそも、見積条件をユーザがきちんとそろえて提示してくれるのを期待するほうがおかしい。RFPをきちんと書くユーザが増えてきたが、まだ少数だろう。曖昧模糊としている状態で、ユーザ自身が気づいていない課題を引き出すこともSEの役割だ。
少々極端な例になるが、トラブル対応のときに、トラブルの原因をユーザに教えてもらおうと言っているようなものだ。原因を見つけ出すのがITプロフェッショナルであるSEの仕事である。同様に、見積の前提条件を導き出すのもSEの仕事である。
ユーザ情報があまり入手できていない商談初期なら、一般的な利用形態をもとにしてとりあえず見積りや構成を作ってみる。これが「たたき台」だ。ユーザの実態と大きくかけ離れていてもよい。まずは、議論の共通土台を具体化・可視化、最近はやりの言葉なら「見える化」することが大事だ。同じ図や数字を見ながら議論すれば、「ここはそのとおり」「この部分は、実際はこうなっている」と、ユーザも情報を提示しやすい。
たたき台としての条件を設定するには、豊富な事例が必要だという人もいる。それもいちおう正しい。しかし、新製品を売り込む場合には、そもそも事例そのものがないから、無い物ねだりだ。その商談で事例を作るという気持ちで臨む必要がある。頭をひねってたたき台を作り、それをもとに会話を重ねれば、ユーザに教えられることも多いだろう。
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