プレゼンテーション資料は脇役
数年前にビジネススクールの短期講座で、プレゼンテーションとビジネスライティングを勉強した。どちらも非常に役立つ内容だった。
2つの講座に共通していたのは、キーメッセージ(Main Point)が一番大切ということである。何を伝えたいかをまずきちんと整理すること。これが、説得力のある文章やプレゼンテーションの大前提だ。文章やプレゼンテーションは、それをうまく伝える手段にすぎない。ところが、資料の説明に終始し、聴いていて退屈なプレゼンテーションをよく見かける。また、プレゼンテーションやライティングの講座と銘打って、小手先の技術のみを扱っているものもある。
私が受講したプレゼンテーション講座では、まず資料を何も使わず、手ぶらで発表する。アイコンタクトやゼスチャーなどを、この段階で学ぶ。これができたあと、PowerPointで資料を作り、それを使って発表する。その資料も段階を踏んで作る。まず、話の流れをわかりやすくする程度に文字だけを書いた資料を使う。次に、説明を補強したりわかりやすくしたりするために図表を追加する。つまり、プレゼンテーションは発表者の話が主役であり、資料はそれを補佐する脇役にすぎないということを教えている。
ややもすると、アニメーションを多用した見栄えのよいプレゼンテーション資料が、聴衆の受けがよいいい資料と思われがちだ。説明文を長々と書き連ねた文字数が非常に多いスライドももよく見かける。こういった資料をスクリーンに投影すると、聴衆の関心がそちらに行ってしまい、発表者の話に集中してくれない。以前書いたように(末尾の関連記事)、資料を配ってしまうのも、聞き手の関心を発表者の話から逸らしてしまうので、私は嫌いである。
発表者の話が主役だとすると、脇役であるPowerPoint資料は、話の流れがわかるようにキーワードを箇条書きにしたものでもよい。図表やグラフも、シンプルなもので十分だ。アニメーションを使わなければならないケースはまれだ。アニメーションがついたスライドを作るのは、手間と時間がかかる。それに手間暇かけるよりも、ストーリーや話し方を練ったり練習したりする方に時間をかけるべきだ。
データの流れや業務フローを時系列に説明したいときは、アニメーションを使いたくなるかもしれない。しかしこれも、矢印で流れを書いておいて、手や腕で指し示しながら、説明した方が、遙かにアピール度が高い。身体を動かすということで、発表者の存在を際だたせるゼスチャーのひとつと考えることができる。
アニメーションを使わざるを得ないのは、数百人クラスの会場で大画面に投影する場合だ。画面が大きいので、手や腕を指示棒代わりに使えない。かといって、レーザーポインタを使うのは逆効果である。点が小さくて非常に見づらいし、赤い点がぶるぶると振動すると聴衆がイライラする。普通の指示棒を使うときも、あまり振り回さないようするのが原則だ。レーザーポインタでこれを実現するのは難しい。ちょっとした手の動きが、スクリーン上で大きく増幅されてしまう。
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