« 2006年10月 | トップページ | 2006年12月 »

2006年11月の11件の記事

2006年11月29日

プレスリリースのちょっと変わった使い方

企業のプレスリリースといえば、新製品や業績を宣伝するために、Webページに掲載したりマスメディアに配信したりするものだ。その会社にとってよいことばかりが書いてあるのがふつうだが、おおっぴらに認めたくないの内情をうかがうこともできる。

たとえば社長が密かに替わったケース。マイクロソフトやサンマイクロシステムズくらいの大企業になれば、社長交代はきちんとしたプレスリリースを出すくらいのニュースだ。しかし中小の外資系日本法人の場合は、プレスリリースも出ずにひっそりと交代することがある。2005年9月の日本ビジネスオブジェクツがそうだった。日経コンピュータの取材で明らかになったのだが、全く発表はなかった。

日本ビジネスオブジェクツのトップがひそかに交代(2005/09/07)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20050907/220768/

プレスリリースを注意深く読むと、この人事異動がうかがえる。2005年7月5日と2005年9月15日のリリースを読み比べてみよう。冒頭の会社名のあとの括弧書きの中が変わっていることに気がつく。

7月5日
http://japan.businessobjects.com/news/press/press2005/050705.asp

世界をリードするビジネスインテリジェンス(BI)ソリューションのトッププロバイダである日本ビジネスオブジェクツ株式会社(本社東京都渋谷区恵比寿代表取締役徳末哲一、米国本社:サンノゼ、フランス本社:パリ、NASDAQ 上場)

9月15日
http://japan.businessobjects.com/news/press/press2005/050915.asp

ビジネスインテリジェンス(BI)ソリューションのトッププロバイダである日本ビジネスオブジェクツ株式会社(本社:東京都渋谷区恵比寿、米国本社:サンノゼ、フランス本社:パリ、NASDAQ 上場)

つまり、「代表取締役 徳末哲一」と書けなくなる事情があったということだ。

このほか、新製品発表のコメントを寄せている重役の名前が変わったとか、広報連絡先の名前が変わっていたり単に部署名になっていたりという変化も、その会社で何か体制や方針の変化があったことを表している。

プレスリリースに限らない。書いてあるものを読んで理解するのは誰でもできる。書いていないことは何か、以前と変わったところが何かを注意深く読みとる、つまり行間を読み取る力も、情報戦であるビジネスでは必須スキルだ。

| | コメント (0)

2006年11月25日

ジョークはマジ顔で

プレゼンや商談の場を和ませるため、ときおりユーモアを織り交ぜるのはもちろんおすすめだ。が、いくらおもしろい話でも、自分が笑いながら話しては効果半減。真面目な顔や真面目な口調を心がけたい。

これは、本多勝一氏が「日本語の作文技術」で述べていることでもある。特に印象に残っている部分を引用する。

落語の場合、それは「おかしい」場面、つまり聴き手が笑う場面であればあるほど、落語家は真剣に、まじめ顔で演ずるということだ。観客が笑いころげるような舞台では、落語家は表情のどんな微細な部分においても、絶対に笑ってはならない。逆に全表情をクソまじめに、それも「まじめ」を感じさせないほど自然なまじめさで、つまり「まじめに、まじめを」演じなければならない。この一点を比較するだけでも、落語家の実力の差ははっきりわかる。名人は毛ほどの笑いをも見せないのに反し、二流の落語家は表情のどこかに笑いが残っている。チャプリンはおかしな動作をクソまじめにやるからこそおかしい。落語家自身の演技に笑いがはいる度合いと反比例して観客は笑わなくなっていく。

バラエティ番組で見る漫才も同じだ。すごくバカなことを真面目にやっているので、おかしさが倍増する。本人たちが笑いながらやっていたら、見ているこっちは白けてしまう。

また、笑いながら話をすると、どうしても発音が不明瞭になる。その結果、せっかくのおもしろい話を相手はよく聞こえず、さっぱり反応がないという、もったいないことになりかねない。

相手とあまり面識がない場合に、真面目な顔でジョークを言っても、「この人の言っていることは冗談なのだろうか、それとも本気なのだろうか」といぶかしがられるだけのおそれがある。ジョークを言ってニヤリと笑うくらいがいいだろう。反応がないときに「おっと、すべりましたね」と自虐的にいうものよいだろう。


| | コメント (0)

2006年11月22日

Tab Mix Plusのウインドウマージ

FirefoxのアドオンTab Mix Plusを使うと、複数のウインドウのタブを1つのウインドウにまとめること(マージ)ができる。ところが、メニューにそれらしきコマンドが見つからない。いろいろ調べてようやくやり方が分かった。

(1)Firefoxのウインドウでいくつかタブを開く。
(2)別のFirefoxウインドウを開き、いくつかタブを開く。
(3)どちらかのウインドウでCtrl + Shift + Mを押す。

これで、ウインドウ1つにすべてのタブをマージできる。

Ctlr + Shift + Mを押す前にCtrl + クリックでタブを選択しておけば、選択した他部だけがもう1つのウインドウにマージされる。

アドオンMinimizeToTrayとTab Mix Plusのウインドウマージは共存できない。FirefoxはIEに比べて初期起動に時間がかかるのが難点だ。MinimizeToTrayは、Firefoxを常駐させ、起動を速くするアドオン。しかし、Ctrl + Shift + Mを実行すると、ウインドウがタスクトレイに入ってしまい、マージが行われない。マージ機能を取るか、常駐機能を取るかだ。

| | コメント (0)

2006年11月19日

日本人の「定食メンタリティ」

アメリカのレストランで食事をするのが苦手だ。料理にあれこれと指示を出さなければいけなかったり、ウエイターと会話しなければならないのが非常にうっとうしい。ウエイターたちは、いいサービスをしてチップをたくさんもらおうとモチベーション抜群。今日のおすすめは何だの、焼き方はどうするだの、しつこく話しかけてくる。いざ食べ始めても、ときどき様子をうかがいに来る。こっちのボキャブラリーは、IT用語にそうとう偏っている。料理に関する会話は苦手だ。

日本のレストランだったら、高級なところを除いて、メニューを見て「これをくれ」といえば十分。嫌いなものを取り除くように注文をつける人はいるかもしれないが、ウエイターがあれこれ話しかけてくることはなく、料理に集中できる。

おそらく、サービスや料理に対する考え方が根本的に違うのだろう。どちらがよい・悪いという問題ではない。文化が違う。

さて、ここから本題だ。レストランに限らず、日本人は「すべてがきちんとしつらえてある」ことを好む。サービスを提供する側が十分に吟味して完璧な仕事をこなすことを当然とする。「いいモノやサービスが提供されて当然」と考え、自分の好みを通すためにあれこれ注文をつけるのは相手に失礼だと考える。私はこれを「定食メンタリティ」と呼んでいる。

日本版マイスペースについて津田大介氏が書いた記事の以下の部分も、日本人のこのメンタリティが念頭にあると思う。

ユーザーページごとに個別に背景を設定できたり、さまざまな情報をごちゃごちゃに配置できるようなカスタマイズ性の高さをマイスペースの魅力と評する人はいる。しかし、統一されたインターフェースの中で遊ぶことに慣れた多くの日本人ユーザーが果たして本当にそれを「魅力」と感じるのだろうか。

海外のベンダーが日本の代理店に製品を取り扱ってもらおうとしているときにも、「定食メンタリティ」に悩まされる。ライセンス体系やサポート体制、ハードウェア保守部品の在庫基準や交換時の業務プロセス、そして販売方針・ノウハウ・事例。これらがすべてそろっていないと、代理店は販売活動を始めてくれない。

初めて日本市場に参入する海外ベンダーだと、こういった日本人の感覚がわからない。そこに代理店の期待度とのギャップが生まれ、最初の立ち上げに苦労する。日本法人が間に介在していると、両者の板挟みになる。数字があがらない一方で、本社を説得して、プロセスやドキュメントを整備していかなければならない。数字があがっていないのにいろいろと注文をつけてくる、やっかいなヤツと思われかねない。

すべてがきちんとしつらえてあれば、一気に販売を伸ばすことも不可能ではない。立ち上げに苦労した分、あとから投資回収できるかもしれない。ところが、いまはスピードがものを言う時代だ。じっくり時間をかけて完璧にプロセスを作り上げている暇はない。走りながら問題を修正し、「ウナギ屋のタレ」方式でプロセスを徐々に作り上げながら、早い時期から結果を出していく必要がある。

「定食メンタリティ」は、高品質の製品を作り続けてきた日本人の美徳でもあるが、いつまでもそこから抜け出せないのも問題だ。もちろん、私もこのメンタリティにどっぷり浸かっているから、最初に書いたようにアメリカのレストランをうっとうしいと感じる。しかし海外ベンダーで働いているうちに、要所要所で定食メンタリティを発揮しつつも、スピードも意識するようになってきた。複数の視点を持つことと、それらの視点のバランス感覚が必要不可欠だ。

(参考記事)
マイスペースは日本の音楽業界を口説くウルトラCを出せるか
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMIT0g000015112006&cp=1

| | コメント (0)

2006年11月16日

iPodを復元(リストア)

最近iPodの調子がよくないので、復元(リストア)してみた。結果は良好。3つの問題で快適さが損なわれていたのだが、どちらも一気に解決した。

問題の1つは音飛び。曲の初めで1秒くらい音が途切れることがある。特に顕著なのが、J-Waveのポッドキャスト「GOOD MORNING TOKYO J.LEAGUE INTO THE PITCH」。「ゴ~~~ル!」という別所哲哉の雄叫びで、必ずと言っていいほど音飛びしていた。復元後、数回聴いたが、まだ起きていない。

20061115itunes
もう1つはiTunesと同期した後の状態。iTunes 7にアップグレードした後から、iPodの更新が終了しても、取り外せなくなった。「接続を解除できます」というメッセージが出ず、「取り出し」を実行すると「他のアプリが使用中」といったメッセージが出て、取り出し可能にならない。しばらくそのままにしておくか、ウイルススキャンソフトを一時的に無効にする必要があった。iPodをディスクとして使うように設定しているときに起きる現象に似ている。iTunes 6まではこんなことがなかったので、iTunes 7での不具合かと思っていた。

3つめは、iPodの電源が切れなくなる問題。クリックホイールの再生/一時停止を押し続けても電源が切れないことがたびたびあった。このときは、どうやらハードディスクが回り続けているらしく、電池の減りがいつもより速い。リセットすれば復帰するが、出張などの長時間の移動中にこれが起きると、現地に着くまで電池が持たない。どうしたものかと思案していたところだった。この問題もiPodの復元で直ったようだ。もうしばらく経過を観察する必要があるが。

結果的には、iPodの復元ですべての問題が解消したわけだ。このiPodを使い始めて1年と数ヶ月。Windows PCと同じく、たまに初期化してきれいにした方がいいのかもしれない。

Windows PCの再インストールは一仕事だが、iPodの復元操作は簡単。しかも、iTunes 7でとてもわかりやすく改良された。iPodを接続して「復元」ボタンを押すだけだ。復元用のパッケージを自動的にダウンロードし、iPodを初期化する。あとは画面の指示に従ってiPodの名前や地域などの初期設定を行えばよい。再びiTunesと同期すれば、PCのライブラリをiPodに転送してくれる。30GB近いライブラリの全転送はUSB 2.0でも相当時間がかかるが、寝る前に始めてほったらかしておけば、朝には終わっている。

| | コメント (1)

2006年11月13日

Firefox 2.0へアップグレード

Firefox 2.0が10月25日にリリースされて約2週間。拡張機能Tab Mix Plusの2.0対応版がようやく出てきたので、これまでのFirefox 1.5からアップグレードした。非常に快適である。

数ヶ月前まではSleipnirを使っていた。これもいいブラウザだと思うが、Firefoxの方が遙かに快適である。表示速度も速い。そもそもSleipnirのタブブラウジング機能の源流は、Firefoxもしくはその拡張機能ではないだろうか。

それに、社内のイントラネットにはFirefoxを前提に作っているものが多い。Firefoxは、tar + gzipで圧縮したログファイルを、自動的に解凍して表示できる。この機能が必須。WindowsとUNIX/Linuxのマルチプラットフォーム製品を開発・販売している扱っている会社だから、開発者のPCはWindowsとLinuxの両方だ。マルチプラットフォームで動くFirefoxが事実上の標準ブラウザになるのは当然だ。

拡張性が売り物のFirefox。使っている拡張機能は4つ。Tab Mix Plus、Google Browser Sync、IE View、そしてSage。拡張機能に凝り出すときりがないので、この程度に納めている。

まずTab Mix Plus。Firefoxのタブ機能は、必要最小限にとどまっている印象だ。新しいタブへフォーカスを移動するかしないか、ブックマークから開いたときに新しいタブを開くかどうかなどは、Tab Mix Plusを使ってはじめて設定できる。もしSleipnirから乗り換えるなら、Tab Mix Plusは必須だ。

Google Browser Syncは、ブックマークや履歴を複数のPC間で同期するもの。これまでは、会社のPCと自宅のPCでブックマークが完全に分かれていて、片方で追加したページを見るのが手間だった。Google Browser Syncを使えば、完全に同じ状態で使うことができる。

IE Viewは、いま開いているページをIEで開く拡張機能。ほとんどのページはFirefoxで問題なく表示できるが、表示が大きく崩れたり、リンクをクリックしても反応しないものがたまにある。こういったときは、右クリックメニューから「このページをIEで開く」を選べばよい。URLをコピーする手間が省ける。特定のURLを必ずIEで開くようにすることも可能。

SageはRSSリーダー。通常はGoogle Readerを使っているが、社内のWikiだけSageで更新をチェックしている。なぜかGoogle Readerで読めないのだ。

| | コメント (0)

2006年11月11日

ThinkPad X24にRescue and Recoveryをインストール

新しいソフトウェアの評価テストなどに使っているThinkPad X24の内蔵ハードディスクを換装し、OSを再インストールして環境を再構築した。Lenovo(旧IBM)の無償リカバリツール、Rescue and Recoveryもインストール。以前の環境で使っていたツールだが、今回のインストールでは少々手こずった。

Rescue and Recovery v2.04をインストールすると、次のエラーが出てしまう。前回インストールしたときは、こんなことがなかった。

この Windows インストーラ パッケージには問題があります。セットアップの一部として実行されるプログラムは正しく完了しませんでした。サポート担当者またはパッケージのベンダに問い合わせてください。

Lenovoのサポートにメールしたら、約1時間後に返事が戻ってきた。送ってきた修正ファイルを実行して、再度Rescue and Recoveryをインストールしたら、今度は問題なく完了。

この修正ファイルは、マスターブートレコード(MBR)を修復するもの。換装したハードディスクは以前、外付けUSBハードディスクとして使っていたから、Rescue and Recoveryが期待するMBRが書き込まれていなかったようだ。Lenovoのホームページにある「Rescue and Recovery - リカバリー修復ディスケット」では解決できない。サポートから修正ファイルをもらう必要がある。

バックアップとリカバリの準備ができたので、付属ソフトウェアを最新版にアップデートしたり、Windowsのサービスパックやセキュリティパッチを適用し、最低限必要なアプリ(秀丸エディタ、キーボードカスタマイズなど)をインストールする。ここまで環境を作ってRescue and Recoveryでシステム全体をバックアップする。いろいろなソフトウェアをインストールして不安定になっても、この時点のバックアップでリカバリすれば、元のクリーンな環境に戻せる。

| | コメント (0)

2006年11月 9日

ハードディスク故障で泣かないPCの使い方

ノートPCが仕事の必需品になって、文房具と同じくらい当たり前の存在になったせいか、扱いがぞんざいな人をよく見かける。いつハードディスクが故障してもおかしくないと思う。よく見かけるのが次の2種類だ。

(1)PCを起動したまま持ち歩く
会議室に行くときやちょっと別の席に移動するときなど、ノートPCを起動して蓋を開けたまま持ち歩く光景は、いまではごく当たり前になった。この前は、新橋の歩道でこれをやっている人とすれ違った。操作していなくても、システムがハードディスクを読み書きしている。パームレストをつまむようにして持ち歩くと、落としたり、どこかに液晶ディスプレイをぶつけたりして壊す可能性もある。

(2)蓋をバタンと閉じる
PCを持って外出するとき、いちいちOSをシャットダウンする時間がもったいないと、蓋を閉めてスタンバイ状態でカバンに入れる人が多い。その使い方は問題ないが、蓋の閉め方は要注意だ。勢いよくパタンと閉じると、ハードディスクへの衝撃がけっこう強い。ポータブルCDを電車の中で聴いていても問題ないが、蓋を指でトントンとたたくと音飛びする。瞬間的な衝撃は、ハードディスクやCDドライブのサーボ機構で補正しきれないのだろう。

(3)蓋を閉じてすぐ鞄に突っ込む
蓋を閉じてすぐに鞄に入れるのも問題だ。PCがスタンバイ状態になるには、数秒から10秒かかる。それまではハードディスクが動作中だ。スタンバイ状態になったのを確認せずに、鞄に勢いよく突っ込むと、ハードディスクへの衝撃もかなりのものだろう。机や床など固い面に落とすよりはましかもしれないが。

ハードディスクの磁気記録面と読み書きヘッドの隙間はわずか10ナノメートル。たばこの煙の粒子より小さく、アルミニウム原子で数10個分しかない(参考記事)。最近のハードディスクは耐衝撃性が非常に向上したし、振動を検知してハードディスクの読み書きヘッドを安全な位置に移動させる機能がついている。とはいえ、稼働中になるべく衝撃を与えないに越したことはない。非稼働時の耐衝撃性は、稼働時に比べて格段に高い。

もちろんバックアップを頻繁に取る。面倒だが、いざというときの最後の砦だ。泣きを見ないために、会社のPCでも個人のPCでも、これだけは欠かせない。

参考記事
「いまさら聞けないITキーワード ハードディスク」(渡辺憲治、日経コンピュータ 2006年4月17日号)

| | コメント (0)

2006年11月 7日

天才プレゼンテータ、スティーブ・ジョブズ

「いい文章を書くには、いい文章をたくさん読むこと。そもそも言葉というものは物真似から始まる」というのは、伊藤忠商事取締役会長・丹羽宇一郎氏の言葉だ(関連記事を参照)。世界初のマイクロプロセッサ4004をインテルと共同開発した嶋正利氏も、「開発であれ,芸術であれ,料理であれ,本物とは何かを会得することが真の開発技術者になる近道だ」と、よいものを体験することの重要性を書いている(参考記事1)。

同じことはプレゼンにも当然当てはまる。いいプレゼンができるようになるには、いいプレゼンをよく見て、それを真似ることが必要だ。

よいプレゼンをどこで見るか。もっとも手軽なのが、展示会やセミナーだ。展示会なら無料招待券が簡単に手に入り、様々なプレゼンテーションを見られる。あるものはプロのナレーターがやっているし、別の会社は社員のエンジニアが製品を紹介している。私の記憶にいまでも残っているのは、2004年のNEC iEXPO、サンマイクロシステムズのステージで見た白川晃氏のプレゼンテーションだ。ジェスチャー、姿勢、立ち位置など、いまでも鮮明に思い出せる。こういった場のプレゼンテーションは玉石混淆だが、できの悪いプレゼンを見て反面教師にするという使い方もある。

最高のプレゼンテーションを見たければ、スティーブ・ジョブズにとどめを刺す。このレベルに達するのは無理としても、少しでも真似ようとする姿勢は大事だろう。そこから自分なりのスタイルが生まれる。

Appleのホームページ(参考記事2)でジョブズのプレゼンテーション映像を見ることができる。私が好きなのは、第5世代iPod発表の瞬間。「What about the wide iPod? It's been a huge success for us. Therefore, it's time to replace it.」 このひと言で会場をどっと笑わせ、そして「Yes, it does video.」 すでに皆が噂でよく知っていることを逆手にとったこの言葉で、拍手喝采だ。間のとり方や声の強弱など、真似したくなる要素がこの10数秒の中にいくつも詰まっている。

Appleホームページのビデオは最初から最後まで1時間半ある。さわりの部分だけを見たいなら、CNETのビデオ記事がよい(参考記事3)。

当ブログの関連記事
「インパクト倍増文章術」
http://raven.air-nifty.com/night/2005/10/post_7394.html

参考記事1
嶋正利のプロセッサ温故知新 : 私とマイクロプロセッサ(3)---米国滞在で目覚めたこと
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20060529/239252/

参考記事2
AppleサイトのApple Eventsページ
http://www.apple.com/quicktime/guide/appleevents/

参考記事3
Video: Steve Jobs shows off iPod with video
http://news.com.com/1606-2-5894095.html

| | コメント (0)

2006年11月 5日

打ち合わせで使うノートの条件

打ち合わせのメモをとるときに、ノートや手帳を使う。書ければ何でもいいという人、ノートをはじめとする文房具に一家言持つ人など様々だと思うが、気をつけたいことがひとつある。情報を隠すことだ。

ノートを開いて右側のページにメモをとると、前回の打ち合わせで書いたものが左のページで丸見えだ。机の向こう側に座っている相手に見られるとまずいことが書いてあるかもしれない。ほかの代理店と進めている商談のユーザ名、社内打ち合わせで書いた内部情報などだ。

これを防ぐには、必ず左のページから書き始めるのがひとつの方法。しかし、右側のページを完全に真っ白なままにしなければならなくなることがあり、紙がもったいない。私は、リングノートを使い、左のページを折り返して使っている。ノートを準備するときや打ち合わせが終わってノートをしまうときも、裏側のページを見られないよう気を遣っている。

コンビニによく置いてあるノートのベストセラー、無線綴じのキャンパスノート(コクヨ)は、折り返しを何回も続けると接着部分が弱ってページが取れやすくなるし、完全に平らにならないので書きにくい。スパイラル綴じが最適だ。

もちろん相手がこういったことに無頓着な人だったら、それとわからないように遠慮なく情報収集させていただいている。

(本ブログの関連記事)
リングノートを横にして使う
http://raven.air-nifty.com/night/2009/01/post-218e.html

| | コメント (0)

2006年11月 3日

選択肢のコントロールで交渉を有利に進める

会議や商談などで意見を相手に押しつけると、たとえ相手がそれを了承したとしても、実行段階でしこりが残る。「相手に決めさせる」という原則は、ほとんどの人が意識しているはずだ。その際に陥りやすい間違いは、選択肢の提示方法だ。

トランプゲームで自分の手札を全部見せる人はいない。しかし、いざビジネスの場になると、これに等しいことをやっている人が時々いる。すべての選択肢を真っ正直に提示して判断させようとすると、かえって相手は迷ってしまい、決められなくなる。提示した選択肢がこちらに不利になる場合もある。

間違いの原因は3種類ある。1つめは、できるだけ多くの情報を与えるのが顧客に喜ばれると思いこんでいるから。もちろんその原則は正しい。しかし、ボランティアで知識を提供しているわけではない。ビジネスは戦いの場であり、情報戦と言っていい。多くの情報を持っている方が戦いを制する。顧客が満足するに必要十分な情報だけを提示し、それ以外は隠し持っておく。これが賢い戦い方だ。

2つめは、単に知ったかぶりをしたいだけの場合。こんなことがあった。ホームページを見た人から製品説明の依頼があり、営業と2人で訪問することになった。用意した資料を使って私が説明を始めようとすると、「ちょっといいですか」と営業が口をはさんできた。そして、「競合製品にはA社やB社がありますよね。A社はこういうところが弱点で・・・」と、独演会が15分くらい続いた。相手がどんな製品を検討してきたかを聞きもせず、こちらの特長をひとことも説明しないうちにだ。競争相手が少ない方が商談は有利だ。それなのに、相手が知らない製品をわざわざ教えて、こちらに不利になるようにし向けているに等しい。行きの電車の中で「製品紹介はあなたに任せます」と言っていたにもかかわらずこれだから、おそらくその営業氏は、知っていることをしゃべらずにはいられないタイプなのだろう。

3つめの間違いは、相手の思考を先読みしすぎて、不利な情報を与えてしまうパターン。頭の回転が速い人が陥りがちだ。メールのやりとりを少なくしようとし、かつ、相手の考えていることをきちんと理解しているとアピールしたいがために、相手の反応を予想し、それに対する回答もあらかじめ与えてしまう。

たとえばテニスの試合では、数ショット先を読んでショットを選択する。相手のバックハンドにこのスピードで打ち込むと、相手は走りながら苦しい状態で返球するから、緩いボールがこのへんに返ってくるはず。それをフォアハンドの空いたコートに返せばよい、という具合だ。こういう作戦を大声で相手に教えているようなものだ。

その予想が当たっていれば、「この人はできる」という高い評価を得られるが、一歩間違うとドツボにはまる。先回りして与えた回答に対して新たな質問を受け、本題を見失い、物事が先に進まなくなる。

交渉がこちらが有利に進むよう、選択肢や情報を意図的にコントロールするべきである。こちらに不利な選択肢を提示するバカは論外として、相手の要求事項・嗜好・判断基準などを事前に十分ヒアリングして、それに沿った選択肢を選別するべきだ。相手が知っている情報と知らない情報をうまく聞き出し、競争を難しくしないように、与える情報を取捨選択することを心がけたい。難しく考えることはない。たとえ話に出したように、みんなが子どものころから親しんできたトランプといっしょだ。

| | コメント (0)

« 2006年10月 | トップページ | 2006年12月 »