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2006年11月19日

日本人の「定食メンタリティ」

アメリカのレストランで食事をするのが苦手だ。料理にあれこれと指示を出さなければいけなかったり、ウエイターと会話しなければならないのが非常にうっとうしい。ウエイターたちは、いいサービスをしてチップをたくさんもらおうとモチベーション抜群。今日のおすすめは何だの、焼き方はどうするだの、しつこく話しかけてくる。いざ食べ始めても、ときどき様子をうかがいに来る。こっちのボキャブラリーは、IT用語にそうとう偏っている。料理に関する会話は苦手だ。

日本のレストランだったら、高級なところを除いて、メニューを見て「これをくれ」といえば十分。嫌いなものを取り除くように注文をつける人はいるかもしれないが、ウエイターがあれこれ話しかけてくることはなく、料理に集中できる。

おそらく、サービスや料理に対する考え方が根本的に違うのだろう。どちらがよい・悪いという問題ではない。文化が違う。

さて、ここから本題だ。レストランに限らず、日本人は「すべてがきちんとしつらえてある」ことを好む。サービスを提供する側が十分に吟味して完璧な仕事をこなすことを当然とする。「いいモノやサービスが提供されて当然」と考え、自分の好みを通すためにあれこれ注文をつけるのは相手に失礼だと考える。私はこれを「定食メンタリティ」と呼んでいる。

日本版マイスペースについて津田大介氏が書いた記事の以下の部分も、日本人のこのメンタリティが念頭にあると思う。

ユーザーページごとに個別に背景を設定できたり、さまざまな情報をごちゃごちゃに配置できるようなカスタマイズ性の高さをマイスペースの魅力と評する人はいる。しかし、統一されたインターフェースの中で遊ぶことに慣れた多くの日本人ユーザーが果たして本当にそれを「魅力」と感じるのだろうか。

海外のベンダーが日本の代理店に製品を取り扱ってもらおうとしているときにも、「定食メンタリティ」に悩まされる。ライセンス体系やサポート体制、ハードウェア保守部品の在庫基準や交換時の業務プロセス、そして販売方針・ノウハウ・事例。これらがすべてそろっていないと、代理店は販売活動を始めてくれない。

初めて日本市場に参入する海外ベンダーだと、こういった日本人の感覚がわからない。そこに代理店の期待度とのギャップが生まれ、最初の立ち上げに苦労する。日本法人が間に介在していると、両者の板挟みになる。数字があがらない一方で、本社を説得して、プロセスやドキュメントを整備していかなければならない。数字があがっていないのにいろいろと注文をつけてくる、やっかいなヤツと思われかねない。

すべてがきちんとしつらえてあれば、一気に販売を伸ばすことも不可能ではない。立ち上げに苦労した分、あとから投資回収できるかもしれない。ところが、いまはスピードがものを言う時代だ。じっくり時間をかけて完璧にプロセスを作り上げている暇はない。走りながら問題を修正し、「ウナギ屋のタレ」方式でプロセスを徐々に作り上げながら、早い時期から結果を出していく必要がある。

「定食メンタリティ」は、高品質の製品を作り続けてきた日本人の美徳でもあるが、いつまでもそこから抜け出せないのも問題だ。もちろん、私もこのメンタリティにどっぷり浸かっているから、最初に書いたようにアメリカのレストランをうっとうしいと感じる。しかし海外ベンダーで働いているうちに、要所要所で定食メンタリティを発揮しつつも、スピードも意識するようになってきた。複数の視点を持つことと、それらの視点のバランス感覚が必要不可欠だ。

(参考記事)
マイスペースは日本の音楽業界を口説くウルトラCを出せるか
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMIT0g000015112006&cp=1

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