「それは仕様です」よりいくらかマシな返答
後出しジャンケンは卑怯だ。これをやられたら、誰でも怒るに決まっている。しかしIT業界のサポートの現場では、後出しジャンケンが日常茶飯事だ。
製品を使っていて期待通りに動かない、もしくはトラブルが発生する。ベンダーのサポートに調べてもらったら、返事は「それは仕様です」。英語なら「This is by design」だ。マニュアルにもリリースノートにも書いてないのに、いまさら仕様だといわれても困る。これはユーザとしても経験したことがあるし、サポートする側としても、不本意ながら言ってしまったことがある。相手は憤慨するかあきれるかだ。
根本的な問題のひとつは、製品が複雑すぎたり、使用時の自由度が大きすぎたりするため、開発者が想定していない使い方や状況に陥ることだろう。ユーザの使い方を設計時に完全に考慮することは不可能だ。ドキュメントの不備ももちろんある。製品マニュアルにはあまりネガティブなことを書けないから、制限事項はWebのわかりにくいところに申し訳なさそうに掲載していることが多い。パラメータの最大値やシステムが許容する最大オブジェクト数などが、よく問題になる。
いちおうコーディング通りに動作しているから、開発者の立場からはバグと言えない。強いて言えば「設計バグ」だ。こういった場合、機能強化要望として取り扱うのが一般的だろう。よほど商談にビジネスに影響がある場合は、営業部門から強力なエスカレーションを行い、仕様変更をパッチなどで出す場合もある。
こういう事態に陥ったときにサポートがやるべきことは、後出しジャンケンをされた相手の気持ちを考えて返答することだ。「申し訳ありませんが、現在はこういう作り込みになっています」と言えば、「それは仕様です」と切って捨てるように告げるよりいくらかマシではないだろうか。もちろん、「この作り込みが実情にそぐわない/お客様のお気に召さないのは承知しており、開発部門に修正を要請しております」と付け加え、実際その通りにリクエストを出してフォローすることも欠かせない。
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