「今インドから目を離すな!」(伊藤洋一のビジネストレンド第67回)
中国とインドは、IT産業では切っても切り離せない仲だ。私の会社の開発陣も、半分くらいはインド出身のエンジニアで、しかも非常に優秀。開発の一部をインドにアウトソースもしている。
毎週聴いているポッドキャスト「伊藤洋一のビジネストレンド」。第67回はインドがテーマで、とても興味深かった。メモとして書いておく。
シン首相が来日。シン首相は、大蔵大臣時代に経済開放政策に梶を切った人物。日印は良好な関係を維持している。中国・韓国・北朝鮮との間のような障害はない。安保理常任理事国入りでも協調した。
インドのニーズは、道路や水道などのインフラの整備への日本の技術や資本の投下。いっぽう日本はマーケットとして重視しており、お互いのニーズは明確。「戦略的グローバルパートナーシップ」を組むのは。非常に意味があること。
80年代末まで、インドは世界経済から取り残されていた。ネール首相以来の社会主義により、輸入に高い関税をかけるなどして国内産業を保護。その結果、競争意識が欠如し、経済成長も生まれなかった。さらにインド伝統のカースト制度は、他の領分を侵さないのがルール。これでは起業家精神が養われない。
インド最大の財閥企業タタを生んだのは、パルシー(ペルシャが語源)と呼ばれるイラン移民。たった18万人程度だが、イギリス人が植民地政策で重用したり、パルシーとシーク教徒だけがカーストの制約に縛られなかった。3000とも4000とも言われるカーストは、小さな国やマーケットの寄せ集めと考えられる。カーストを横断できる立場を利用して、自然と力を持った。
インドは、ITとともに世界経済へ登場した。ITはカーストの枠に入らない新しい産業(超カースト)。できる人がやる職域で、カーストの枠を超えて、できる人が集まった。さらにアメリカや世界銀行のニーズに合った。アメリカのエンジニアの6分の1の賃金という低コストで、Y2Kのエンジニア不足を補った。需要が集まる→富が集まる→給料上昇→人が集まるというポジティブなスパイラルで大きな産業に成長。
インド人のITに対する適性(英語と数字に強い)も功を奏した。英語はイギリス植民地の置きみやげ。1本の指で4つ数え、かけ算や割り算も手でできる、99×99まで小学校で覚える。時差も利用できる。たとえば、アメリカの夜間にカルテデータを入力し、朝までに送り返す。
外交がうまい。パキスタンは少々ごたごたしているが、中国やアメリカと和解したし、対立している国がない。
インドが成長を続けるポイントは、教育、イスラム教徒ヒンズー教徒対立、インフラの整備。識字率が35%と非常に低い。農村の貧困。都市のスラムへ移住するが、学校に通わせない。豊かさに参加できるのは2割。裕福なイスラム教徒は、イギリス植民地からの独立時にパキスタンへ移った。インドに取り残されたイスラム教は貧困。差別されていると感じている。テロは収まらないだろう。マーケットが細かく分かれているので、難しい。カースト別はもちろん、北と南でも嗜好が全然違う。
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