汚いノートの効用
学生時代は、シャープペンシルでノートをとっていた。もっとさかのぼると、小学校ではもちろん鉛筆だ。「ロケット鉛筆」なる筆記具を使っていたこともある。要するに、「書いて消せる」筆記具を使っていたわけだ。
社会人になってもしばらくはシャープペンシルだった。しかし、ある記事を読んでボールペンに切り替えた。それは、「欧米の学生はボールペンでノートをとる。あとで間違いとわかったものでも、思考の過程を残すためだ」という内容。「欧米の学生がボールペンでノートをとる」というのが本当かどうか確かめてないが、この考え方には共感した。
思い返すと、鉛筆やシャープペンシルでノートをとっていたころは、「きれいなノート」を残そうという意識が強かった。思考の過程を残せるボールペンに対して、あくまで結果重視で正解重視。間違ったものは速やかに消して、正しいことだけをあとから読み返しやすいように記録するのが。鉛筆やシャープペンシルのノートだ。テスト偏重だった当時の学校教育の影響と言えるかもしれない。
斎藤孝氏の三色方式に出会ってからは、書いたものを赤でぐるぐる巻きにしたり、矢印を書き加えて関連を示したりと、ずいぶん「汚いノート」になった。しかしその反面、重要なところとそうでないところ、気になっている部分とそうでない部分が、ぱっと一目で見分けられる。
PCでメモをとる人をときどき見かける。私もやったことがあるが、タイプミスや変換ミスの修正で集中力をそがれるし、残ったメモが印象に残りにくいように思う。それはおそらく、PCの画面では情報が画一化されてしまうからだろう。Word形式のファイルやリッチテキスト形式なら、フォントを変えたり色を変えたり文字修飾を加えたりして、手書きノートに近いことができるが、そのスピードは手書きの比ではない。
PCのメモで思考の過程を残そうと思うと、Wordの校正履歴をオンにして、どこを修正したかを記録に残すという手がある。しかし修正のしかたよっては、元々どう書いてあったのか、どのように修正したのかを判別するのがとても難しいことがある。この点でも、手書きノートに軍配が上がる。
保存・流用・検索のやりやすいPCのデジタルメモと、汚くて印象に残る手書きメモの両方の長所を兼ね備えたメモツールが待ち遠しい。Windows Vistaで標準搭載となったタブレットPC機能が、その先鞭をつけている。10年後には、こういった技術が当たり前になっているのだろうか。
(当ブログの関連記事)
三色ボールペン読書術・情報活用術
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