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2007年3月10日

英語コミュニケーションで日本語の質を高める

小学校での英語必修化が是か非か、あちこちで議論されている。私は最初、子どもには英語より先に日本語をきちんと教えるべきだと考えていたのだが、それはどうやら間違いのようだ。2007年3月5日付の日本経済新聞に、神奈川大学名誉教授の伊藤克敏氏が寄稿した「小学校での英語必修化 日本語能力も養う 早期の教育 各国で効果」という記事が出ている。それによると、

確かに、60年頃までは、一定の言語能力のスペースに外国語が入り込むことによって母語のスペースが侵害されるという考え方が強かった。
だが、最近の二言語教育の研究では、言語は表面的には異なってても根底においては共通する面が多く、人間の持っている言語能力は、複数の言語が入り込むことによってより高まり、豊かな言語感覚が身につくという見解が支配的だ。

そして、カナダで60年代から長期にわたって行われた、早期二言語教育を受けた児童と受けなかった児童の比較研究や、諸外国での複数言語教育の事例を紹介している。

これは子どもの教育の話だが、大人であっても、他言語コミュニケーションを頻繁に行うと、日本語コミュニケーションの質も高まることがあるかもしれない。それは、多言語コミュニケーションの弱点を日本語能力でカバーしようとするからだ。

英語を大人になって使うようになった、たとえば日本企業から30代以降に外資系に転職したような人を考えると、英語コミュニケーションの機会が、それまでの一生と比べものにならないくらい増える。外資系の中には、英語をあまり使わなくてすむ会社もあるが、それは今は考えない。そうすると、つたない英語で会話するのに加えて、文化的背景などの違いによって、コミュニケーションに苦労する。日本人同士であれば常識的なことも、アメリカ人には一から説明しなければならない。

ここで、何とかして自分の考えを伝えようとして努力する人は、自分の英語力やボキャブラリーに合うように、言いたいことを言い換える。あるいは、暗黙の了解や当たり前のことと考えていたことを、改めてきちんと説明する。この過程で、日本語能力が磨かれる。

この経験は、日本人同士の日本語の会話でも同様に役に立つ。日本人同士であっても、コミュニケーションギャップはしょっちゅうだ。たとえば、新しい代理店とつきあいを始めると、お互いの企業文化や業務用語が異なるため、業務プロセスのすりあわせに苦労する。その原因は、自分の使っている言葉が相手のボキャブラリーにないからだし、自分と相手の前提知識が違っているからだ。言い換えや詳しい説明を繰り返すしかない。

最後に、小学校の英語必修化に話を戻すと、決して英語が嫌いになるような教育にはして欲しくない。私の年代は、英語といえば受験英語。小難しい英文読解や、規則を覚えるだけの文法など、英語を嫌いになるためとしか思えないような教育しか受けてこなかった。これは日本にとって大きな損失だ。英語でも中国語でも韓国語でもよい。ほかの国の言葉を習得するのは楽しいことだと思えるような教育をぜひやって欲しい。

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