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2007年9月の2件の記事

2007年9月30日

消火と防火

トラブルの火消し役という言葉がある。サポートの重要な役割も、トラブルが発生したときの解決。つまり火消しだ。トラブルの消火活動は待ったなしだから苦労も多いが、エスカレーションでいろいろな部署の協力を得やすいし、解決できたときの満足感も大きい。ユーザや営業から感謝されることもある。サポートエンジニアをやっていてよかったと思う一瞬だ。しかし、こういった華々しい活躍よりも、火を出さないこと、つまり防火活動の方がもっと大切ではないだろうか。

コンピュータハードウェアやソフトウェアの防火活動の基本は、製品の品質を上げることだ。ただしこれは開発部門の仕事だから、サポート部門は直接タッチできない。しかしサポート部門にできる防火活動もある。ユーザが間違いそうな使い方を想定したり、日々のサポート活動から抽出したりして、技術情報としてWebで公開する。あるいはそれを改善するよう、開発部門に働きかけることが代表的な防火活動だろう。トラブルの傾向を整理して開発にフィードバックしたり、トラブル調査に必要な機能を提案したりすることも防火活動の一環と考えられる。

消火活動は、火が出たら消すというふうに、どちらかというと受身的な対応を余儀なくされる。防火活動は、自ら積極的に動き、何をすればいいか頭を使って創造的な仕事をする必要がある。仕事の質が違う。

防火活動の注意事項は、成果が目に見えにくいことだ。防火が十分行われているとトラブルが起きないから、他部署や経営層に注目されにくい。下手をすると、サポートは楽をしている、人数がそんなにいらないんじゃないかと思われかねない。苦労を報われないこういった措置を執られないように、防火活動を可視化し、アピールしていくことが欠かせない。サポートマネージャにはメンバーの活動をきちんと評価していく姿勢も求められるだろう。

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2007年9月29日

パートナービジネスモデルのメリットとデメリット

海外ベンダーが日本市場に参入する場合は、十中八九、パートナービジネスモデルを採用する。どこの馬の骨かもわからない海外ベンダーから直接製品を購入して、自社のITインフラに使う企業は少ない。日本で名の知れたシステムインテグレータ経由で購入する道を、ほとんどの企業が選択するだろう。

ユーザ企業にとってのメリットは、ひとことで言えばリスク軽減である。たとえば、

・ベンダーが撤退した場合でもインテグレータにサポートを継続してもらう。
・ベンダーが開発を中止しないように睨みをきかせてもらう。
・インテグレータによる徹底的な検証で品質を担保する。

などだ。つまり保険をかけながら最新技術を利用できる。短所は、パートナーが検証の工数や利ざやを稼ぐためにコストを上乗せするから、直接調達に比べて価格が高くなることだ。保険料と思うしかない。

ベンダーにとっては、商慣習や文化がきわめて異なる日本市場でのビジネスノウハウをインテグレータから吸収する、あるいはアウトソースすることで、参集障壁が低くなるというメリットがある。外国の企業を個別にサポートしたり要望をヒアリングしたりするのは、言葉や文化の壁で苦労が絶えない。パートナーが日本の窓口となってサポートやヒアリングを代行してくれれば、その効果は非常に大きい。

逆にベンダーにとってのデメリットは、パートナー1社が数多く販売することで、トラブルの傾向や品質が丸裸に近くなることが挙げられる。直接販売モデルであれば、大量に調達する製品や大企業を除いて、ユーザ企業から見えるのは自社が経験したトラブルだけである。一方パートナーは、数多くのユーザに販売・サポートすることで、どんなトラブルが多いかという傾向を把握することができる。たとえばロット不良がおきたり、バージョンアップで品質が低下したりすると、その説明や対策にベンダーはかなりの労力を取られる。

一般的にいって日本企業は、トラブルを修正するだけでは満足せず、原因と対策を詳細を説明するように求める。欧米ユーザもそういった説明は要求するが、要求の細かさや深さで日本企業は段違いだ。これはベンダーにとって短期的にはコスト増でデメリットであるが、雨降って地固まるという言葉のように、これをうまく乗り越えてパートナーとの信頼関係をより強固にしたり品質を向上させたりできると、日本市場でのビジネス拡大につながり、ベンダーにとってもメリットとなる。

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