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2007年10月18日

パートナーの育成は距離感のコントロールが肝

先日、営業マネージャから相談を持ちかけられた。パートナーのプリセールスSEの技術スキルが思うように上がらない、どうすればいいかという。私はカスタマサポート部門が担当だから、プリセールスSEのトレーニングは当社プリセールスSEの役割だ。基本的な導入方法は事前に教えていし、彼らが一緒に資料を作ったり検証したりしている姿をしょっちゅう目にしていた。うまくやっているように見えるが、営業マネージャは満足していないらしい。

どんな点を見てスキルが上がっていないと感じるかと尋ねてみた。こういう漠然とした質問を受けたときは、相手の悩みや疑問を具体化していくことが欠かせない。これは以前書いた「どうしてそう思われますか」法だ。適格な返答をするには、相手の悩みを理解するところから始める。

彼が言うには、客先でデモをしようとしたとき、システム設定を初期化するコマンドを知らず、あちこちに電話したりして無駄な時間を費やしてしまったらしい。そんな基本的なコマンドを知らないということは、トレーニングが足りないのではないかと感じたようだ。

トレーニングが足りないというのはそうだろう。トレーニングの量よりも、質や進め方に問題があるのではないかと考えた。当社のプリセールスSEは実に親切で、いろんなことを事細かにパートナーに情報提供する。パートナーから見ると、ドキュメントに書いていない情報まで懇切丁寧に教えてくれるベンダーは、仕事がやりやすい。このやり方は基本的には間違っていない。

ただ私が見て感じたのは、手取り足取り教えることによって、相手の自主性や独立心の向上を妨げているのではないかということだ。くだんの初期化コマンドは、覚えるのは簡単だ。では、それを使う状況をトレーニングの中で与えたかどうか。デモの練習をするときに、ケーブルを結線して、サーバ類は全て初期設定に戻し、「さあ、最初からやってみよう」としていたのではないか。私だったら、ケーブルの配線からやらせる。サーバは前回のデモ設定をそのまま残しておき、設定の初期化からやらせる。

パートナーに限らず、新しいメンバーに早く自立してもらいたいなら、基本的な事柄を教えたあとは、とにかく自分でやらせる必要がある。頭をひねったり手を動かしたりしてやっていくうちに、基本トレーニングを受けたときに考えつかなかった疑問や状況に遭遇する。「こういう状況ではどうすればいいか」「うまく動かないが、どこを調べればいいのか」。その解決を手助けすることによって応用力が付いてくる。あくまで手助けするだけであって、答えをいきなり教えるのは禁物だ。ヒントを与えて、自分で考えさせるようにしなければいけない。

こう考えると、あまり親切すぎるのは考え物だ。かといって、冷たく突き放すのもまずい。相手との距離感をうまくコントロールするスキルが欠かせない。このことは、パートナーとの付き合いにとどまらず、自社の要員を育成するときにも全く同じことが当てはまる。つまり、部下育成に長けた人間は、人をうまく動かすことが成功の基本であるパートナービジネスに向いているし、その逆も言える。

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