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2009年1月21日

英語は「前から限定、後ろから説明」がネイティブの感覚

「英語は後ろから訳しなさい」と高校あたりで習った覚えがある。たとえば、

This is the house where I was born.

という例文では、「where I was born」を先に訳し、次に「the house」を訳して、「これは、私が生まれた家です」となる。至極もっともな教え方だし、自然な日本語にするならこうせざるを得ない。しかしこれに縛られていて、英作文で苦労することになっているのではないだろうか。「ハートで感じる英文法」3部作を読んでそう考えるようになった。

このシリーズは目から鱗がぼろぼろ落ちるほど面白かった。特に重要なポイントは、英語は配置のことばであり、並べることで説明する、そして「前から限定、後ろから説明」という原則である。これらの原則をもとにすると、「左から右に文章を作る」というネイティブが当たり前にやっていることができるようになる。左から右に文章を作るのは、後ろから訳すという英文読解テクニックとまるっきり逆である。

上の例文をネイティブ的発想で作ると、こういうことになる。まず「This is the house」という骨格の文ができる。定冠詞theを使っているのは、いま見ている家にスポットライトを当てて、ほかの家と区別しているからだ。ネイティブの頭の中では、まずひとつのものにスポットライトを当てるためにtheが思い浮かび、そこにhouseという単語をはめ込む。これは「前から限定」の原則である。the houseだけでは情報が不足しているので、どんな家かということを「where I was born」というwhere節で「後ろから説明」する。

あるレベル以上の英語学習者が悩むのが、関係節で修飾された名詞に不定冠詞(a/an)を付けるべきか、定冠詞theを付けるべきかである。ここで犯しがちな間違いは、関係節で限定されているのでtheを付けるという考え方だろう。上の例文は確かにそうなっているようにも見える。しかし本質は異なる。theを使っているのは、いま見ている(もしくは話題にしている)houseにスポットライトを当てて「前から限定」するためである。このことは、次の2つの例文を対比することで理解できるだろう。

This is a house where I lived.
This is the house where I lived.

生まれてからいままでに何回か引っ越している人なら、住んだ家は複数ある。その複数の家のうちのひとつということを「前から限定」するために不定冠詞aをつかう。二番目のtheを使った例文は、その人が一度も引っ越していないということを意味していて、その唯一の家にスポットライトを当てるためにtheを使っている。「後ろから説明」している語句の有無とは別の原則で「前から限定」するために冠詞を使い分けるのである。

そもそも「名詞に冠詞が付く」という発想が間違いの元である。マーク・ピーターセンが「日本人の英語」で次のように書いている。冠詞は名詞の添え物ではない。ネイティブの頭には、まず冠詞が浮かび、それに名詞が付く。

ネイティブ・スピーカーにとって、「名詞にaをつける」という表現は無意味である。

英語で話すとき --- ものを書くときも、考えるときも --- 先行して意味的カテゴリーを決めるのは名詞ではなく、aの有無である。そのカテゴリーに適切な名詞が選ばれるのはその次である。もし「つける」で表現すれば、「aに名詞をつける」としかいいようがない。「名詞にaをつける」という考え方は、実際には英語の世界には存在しないからである。

(本ブログの関連記事)
「ハートで感じる英文法」(大西泰斗、ポール・マクベイ)
http://raven.air-nifty.com/night/2008/11/post-7ee3.html




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コメント

英語がすげー苦手な人間ですが
すげー勉強になりました。

投稿: もこ | 2009年10月25日 11時58分

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