2008年12月15日のNHKスペシャルで、派遣労働者問題を取り上げていた。正規・派遣労働者の雇用を守るにはどうしたらいいか。一例としてオランダの取り組みが紹介された。オランダでは、仕事内容が同じであれば正社員と同じ賃金が非正規社員にも支払われるし、非正規社員への職業訓練も企業が負担している。バラ色のように見えるが、その反面、政府や企業の負担をカバーするために、消費税は19%である。
別の民放番組では、派遣労働者支援団体の代表や、経営破綻した京急ホテルに残って仕事を続ける料理長らが、金融危機を引き起こした元凶の代表としての外資系金融マンと対決するという構図で対談していた。わかりやすい二極構造を示して、外資系金融マンを悪者扱いするという意図があったのだろうが、金融マンの発言でその構図が崩れてしまった。その金融マンは派遣労働者生活を送っていたことがあるが、その立場に甘んじてはいけないと一念発起し、いまの地位を勝ち取ったという。彼と話をする派遣労働者支援者の矛先が明らかに鈍った。
我が身を振り返ってみると、外資系日本法人、特にまだ日本市場で地位を固めていない小さな会社の社員というものは、正社員であるものの、いつ首を切られるか、いつ会社が無くなるか分からないという点で、派遣労働者と同じように不安定な身分である。しかし山一証券の破綻で分かるように、もはや大企業といえど、正社員の身分が保障されているわけではない。いま取引のある日本企業で、正社員にもかかわらず、事業縮小に伴って解雇となったものが何人かいる。正社員/非正規社員を問わず、万が一の場合に備えて、自ら身を守る準備をしておくべきだろう。
私が最初に就職した会社は国内有数のコンピュータメーカだ。そこで私の上司課長が言ったひとことがいまでも記憶に残っている。
「君たちのやることや言うことをお客さんが信用してくれるのは、あくまでこの会社の看板があるからだ。看板が無くても社外に対してアピールできるだけの実力を付けなさい。」
その手段として彼は資格取得を推進していた。資格は客観的な指標になるから、持っていて損はない。とくに社会人数年目の若い人たちには勧めたい。ただ、私にとって資格は、あくまで手段のひとつにすぎない。書類選考や面接で資格を評価するときは、資格の種類にもよるが、基礎的な素養は持っているだろうという一次フィルタ程度に使う。いちばん大事なのは、これまで何をやってきたか、そしてこれから何ができるか(できそうか)である。
正社員と非正規社員という立場を決める要素にはいろいろあると思うが、本人の努力がもちろん非常に重要なのはいうまでもない。池田信夫氏が述べているように(参考記事を参照)、現代の企業は、能力のある人材を長期間抱え込むために正社員として雇用するのである。代替可能な仕事はなるべくコストをかけずにすませたいから、非正規社員を一時的に雇用する。
もちろん本人が努力にも関わらず乗り越えられない事情もあるだろうし、正社員よりずっとできる派遣社員がいるのも十分承知していると補足しておく。
(参考記事)
19世紀には労働者はみんな「派遣」だった(池田信夫 blog)
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/78d36ac0e6fa382a3cdfa1e4cfd43669
正社員はなぜ保護されるのか(池田信夫 blog)
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/6f25d91562dde99852b461cf6e7f7179
「オランダのワークシェアリング」(プラネット・TIMES)
http://www1.ntv.co.jp/news/wmtram/news_dw.cgi?movie=081222094.cgi.56k.125599.html
棟岳寺で「オランダ祭り」-オランダ元在住者が日本文化との違いを講演(金沢経済新聞)
http://kanazawa.keizai.biz/headline/351/
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